第27話

 数日が経ち、アルは教室で本を読んでいた。


「ミリエルさーん。掲示ボードに貴方宛の手紙貼ってありましたよー」


 突然同級生に言われ、アルは視線を生徒に向ける。

 生徒はアルに近づく。


「……僕宛に?」

「これですこれ」


 そう言って生徒は手紙をアルに渡す。アルは受け取り生徒にお辞儀を言う。

 そして手紙をじっと見て、封を解き、中身を見る。


『アル・ミリエル様へ。貴方の傍にいる獣人は悪い女です。今すぐ離れてください。貴方の為です』


 アルはその手紙を読み。はあ? と首を傾げた。差出人は誰かと確認するが、どこにも差出人は書いていない。アルの名前だけは書いてあるその手紙に、アルはいたずらか? と思った。

 手紙の主が書いてある獣人はミリヤの事だろうか。でもなんの為に? とアルは眉間に皺を寄せる。そして後でクロスの部屋に言って相談してみようと思った。ミリヤに話すのは不味いと判断したアルは手紙を鞄の中に入れた。

 もやもやした気持ちが残ったがアルはその感情を無視した。


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「クロスさん」


 寮に戻った後、アルはクロスの部屋の扉を叩いた。少ししてからクロスが出て来て「アルさん? どうしたのですかあ?」と首を傾げた。


「話したい事があるので、中に入れて貰えませんか? ここでは離せない内容なので」

「――? いいですよお?」


 クロスは首を傾げたままアルを中に入れた。そしてアルの手にある手紙を見て「それは何ですかあ?」と問いかけた。


「話はこの手紙の事なのです」


 そう言ってアルはクロスに手紙を渡す。クロスは手紙を開き中身を見る。そして目をぱちくりさせた後眉間に皺を寄せた。


「なんですかあこれ。いたずら?」

「いたずらだといいのですが、もやもやが晴れなくて、ミリヤさんに何かあるかもしれなくて」

「おやあ……。誰が書いたんでしょうねえこれ。差出人が書いてない……」

「これを僕に渡した人が言うには、掲示ボードに貼ってあったそうです」

「その話を信じるなら、一般科の人ではないですねえ。一般科の人ならポストに入れればいい話ですからねえ」

「一般科の女性なら、掲示板に貼るかもしれませんよ。女性はこの男性寮に来れない」


 アルの言葉にクロスは「そうでしたあ」と言ってから、中に入るように言う。アルはそれに頷き中に入り椅子に座る。その間クロスは紅茶の準備をしながらアルに話しかけた。


「嫉妬……ですかねえ?」

「僕に嫉妬する事ありますか? 僕の一般的認識、悪い奴ですよ? 相手に得がない」

「ですが最近はその認識は変わってるみたいですよお? 普通の人なんじゃないかーと噂を耳にしたことあります」

「そうでしたっけ」

「アルさん、興味ない事はとことん興味ないですよねえ? そうですよお。認識変わってますよー」


 興味の話をされたアルは「お二人方の話は興味ありますから……」と小声で呟いた。

 クロスは紅茶をアルの近くに置いてから菓子も持ってきて机に置く。


「それにしてもこの手紙……ミリヤさんに害がなければいいのですが……」

「アルさんはミリヤさんにぞっこんですからねえ。誰が見てもデレデレですから、こういう手紙貰っても仕方ないのかもしれないですねえ」

「……そんなにデレデレしてます?」

「してますよお。二人共幸せそうだなあと」


 まだ付き合ってないのが不思議なぐらいですねえ。とクロスは笑う。

 アルはそれを聞きながら紅茶を飲み、「いつかはいの返事貰います」と小声で呟いた。


「頑張ってくださいー。さてえ、この手紙書いたの誰なんでしょうねえ……」

「さあ……」

「とりあえず、ミリヤさんからは離れない方がいいかもですねえ」

「そうですね。危険を防ぎやすい」


 そう方針を決めてから二人は紅茶タイムを楽しんだ。

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