第23話
騒がしくなってきたのを感じながらアルは校舎の外に出た。校舎内は先程までついていなかったが今は明かりがつき、騒がしい声が聞こえていた。
真っ暗な中アルは影に入り込み影から鍵が閉まっている部屋等を見ていく。だが一向にキリの気配はなく、アルは外に連れ出されたのだろうか。と考え込む。
影から出て今度は外で何か怪しいものはないかを探し始める。短剣を忍ばせ奇襲に対応できるようにする。
そしてアルは先程まであった事に気づかなかった小さな校舎を見つけた。その校舎に纏った雰囲気にアルは、隠す系の魔法を使ってこの校舎自体を見にくくした? と思った。その考えを持ち、何か起きるのは確実とアルは影から校舎の中に入る。
校舎の中は暗く、アルは罠があっても踏まずに済むから楽だ。と思いながら影の中を移動する。
そしてある一室だけ光がついているのを見つけアルは影から出る。そして勢いのまま扉を開く。
「んんー!!」
「見つけました、キリ様」
そこにはテープで口を塞がれ縄で腕を縛られているキリの姿だった。アルは警戒を解かないまま口のテープをはがす。
「大丈夫ですか?」
「っ……後ろ!!」
「――おっと」
キリの言葉と共に殺気を感じアルはその場から横に飛びのく。それと共に短剣を持った人物がアルのいた地点に落ちてきた。
「暗殺者ですかね」
「よく躱したなあ? まあいい、次で仕留める」
「聞きたい事あるのですがいいですか?」
「はあ? ……いいぞ。お前さんの冥途の土産として聞いてやるよ」
「シベリウスさんの悪い噂を流したのは貴方ですか?」
「そうだが? ミリエル家にはいい思い出がないもんでなあ、それに関わってるシベリウス家にちょっかいだしただけだ」
「そうか。なら貴方に用はない。死ね」
その言葉と共にアルは暗殺者の懐まで潜り込む。暗殺者はそれに驚きつつすぐに身を躱す。そこにアルは睡眠剤の注射器を投げる。
それを短剣で弾き帰した暗殺者にアルは更に注射器を投げる。
「注射器……面倒だな!」
注射器を壊した暗殺者は下がりアルはキリの元に降りる。
「お前さんを討ったら、いい金が貰えそうだ」
「そうか。『フラワーハピネス』花でもどうぞ?」
アルは花を作り暗殺者に投げる、暗殺者の近くてぽとりと落ちた花に暗殺者は首を傾げる。
そして暗殺者の視線がアルに戻ったのを確認したアルは言った。
「弾けろ」
その言葉と共に花がばふんと花粉を巻き散らした。アルは咄嗟にキリに花粉を吸わないように口元を抑える。
そして暗殺者の動きがなくなったのを確認したアルは窓を開け、空気の入れ替えをする。
そして花粉が消えた後、暗殺者がその場で倒れていた。
「え……貴方、彼に何を?」
「眠らせただけですよ。あれだけの花粉を吸ったんです、暫くは起きないでしょうね」
キリの縄をほどいてその縄で暗殺者を縛る。キリはよろよろと立ち上がり暗殺者に近づく。ぐっすりと寝息を立てている暗殺者を見てキリは呆然とした。
「さっきの魔法は何?」
「秘密です。この方の目的はティル様をここにおびき寄せて殺す事でしょうね。キリ様、先に戻ってここの事知らせていただけますか?」
「え、貴方は?」
「この方の見張りです。万が一起きた時すぐに対処ができるので。ほら、早く」
アルの言葉にキリは動揺しながら「すぐに戻ってくるわ……」と外に向かって行った。
「花の事は知れてなくてよかった。まあ、知られてもどうにでもなるけど」
そう呟き、教員達の到着を待った。
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その後教員がアルの元に到着し、少しの事情聴取の後アルは解放された。
「アル様!」
「……なんです、ティル様」
寮に戻ろうとした時、アルはティルに声をかけられた。
「キリを助けてくれてありがとう!」
「おやすみなさい。良い夢を」
「お、おい!」
「これ以上貴方と話す事はありません。キリ様の傍にいればいいと思いますが?」
「――! あ、ああ!」
アルの言葉にティルは頭を下げてからキリの元に向かった。残されたアルは欠伸をして寮へと戻っていった。
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