第21話
「何それ……酷いねそれ」
ミリヤと合流した二人は噂の事をミリヤに話した。ミリヤは「そんな噂獣人科には入って来てないよ」と話した後しょんぼりと顔を俯かせた。
「悲しいね、クロスくんはそんな事する人じゃないのに」
「僕の第一印象が悪いんでしょうねえ。こういう噂を立てられても仕方ないのかもしれないのですねえ……」
ですが落ち込んでも意味はないので僕は気にしませんよ! とクロスは笑う。それを見たミリヤは「クロスくーーん!!」とハグをした。それにクロスも抱き返し、二人で笑った。
その間アルは手紙をじっと見て机の上の置く。
「いたずらにしては度が過ぎてます。これを書いた方は一体どういう意図でこんな事を?」
「さあ……でもこの文を見たら、アルくんとクロスくんを離れさせようとしてるように感じたよ」
「僕達を離れさせて相手に何の得があるのでしょうか?」
三人で首を傾げる。
「二人共、どうする? 私は犯人捜しした方がいいと思うんだ。二人の印象が悪くなるのはやだ」
「そうしたいのですが、手掛かりがこれだけなので、犯人を捜しようがないのです」
「困りましたねえ……」
腕を組みながら考えるミリヤ、クロスはポニーテール部分の髪を触りながら困ったような表情をする。
アルは紅茶を飲みながら表情を変えずにじっと紙を見つめる。
そうして時間だけが過ぎていき、ミリヤは先に獣人寮へと戻って行った。アルはクロスに何かある事を考え、部屋まで同行した。
「アルさん、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
パタンとクロスの部屋の扉が閉まったのを確認してからアルは部屋に戻って行った。
そして少しの間仮眠をしていつものように深夜に部屋から出る。
足音と気配を消しながらアルは変わった点がないかを確認する。そして交流広間に向かうと明かりが見えた。
明かりはランタンの光で、それを持っているのはキリだった。アルは気配を解きキリに話しかける。
「キリ様、どうしてこんな所に?」
「っ、びっくりした。いきなり話しかけないで……まあいいわ。ミリエル、貴方を待ってたの」
「……僕を?」
キリはアルを見ると警戒を解き、近くの椅子に座るように言う。アルは言われるまま椅子に座りキリから話しを聞く。
「何の用ですか?」
「噂について情報持ってきたから渡しにきたのよ」
「何が目的ですか?」
「目的はないわよ。ただ、知っていただけ」
そう言ってキリは話始める。ティルの元に手紙を置いた人物の事を。
その人物は何かに憑りつかれたかのような様子であったこと。次の日話を聞いてたらその相手は何も覚えていなかった事。キリは会話を聞かれているかもしれないかもしれないからと小声で話した。
「あたしが知ってるのはここまで。あとは貴方に任せるわ」
「……何かの予兆の可能性がありますね」
「そうね。気を付けた方がいいわよ。何か、嫌な予感がするから」
キリはそう言いランタンを持って「じゃ、目的は達成できたから帰るわ。おやすみ」と言って寮に戻って行った。
アルは椅子に座ったまま天井を見て考える。
何か、不吉な事が起きる。原作にこの展開は…………そう考えた所でアルの思考は止まる。
「あ、れ……この先、何が起きるんだっけ……?」
先の展開が掠れたように思い出せない。思い出そうとするにも霧がかかったかのように思い出す事が出来ない。
「…………神のいたずら……だったり」
思い出せない事にそう結論をつけアルは部屋に戻って行った。
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