第19話
「くーろーすーさーんー」
「うわっ……!? え、アルさん!?」
アルは窓から窓へ移動しクロスの部屋まで辿り着く。そして窓をこんこんと優しく叩き声をかける。
思ってもみなかった場所からの来訪者にクロスは驚き何事!? と窓の方向を見て腰を抜かした。
その様子を見てアルは、この性格で嵌めるなんて出来ないだろ……と思った。
クロスはすぐに窓を開けアルを向かい入れる。アルは靴を脱いで部屋の影に靴を仕舞った。
「ええと……アルさん? 一体こんな時間に僕に何の用ですかあ……? しかも窓から……ここ地面から高いんですからあまり危ない事はしないでくださいよお……ミリヤさんが泣きますよ!?」
「すみません。バレずに来るにはこれが一番だと思いまして」
「……? まあいいですが」
アルの言葉に疑問を浮かべながらクロスは紅茶の準備を始めようとする。アルは「大丈夫です。すぐに部屋に戻りますので」と言ったが、クロスが「来たからにはおもてなしを受けるべきですよお?」と紅茶をアルに出した。
「ああ、ありがとうございます……」
「で、何の用ですかあ?」
「あちっ……クロスさんは最近噂されてる話について知ってますか?」
「噂?」
アルの言葉にクロスは首を傾げる。心当たりがないようで、クロスの頭は疑問で埋まる。
「シベリウスさんがミリエルさんを嵌めている。という噂です」
「……ん、んんん!? ちょっ……ちょっとそれはどういう事ですかあ!? え、僕が、アルさんを嵌め……え!?」
「その様子ですと、嵌める事自体知らないようですね」
「ええ、ええ! 知りませんよ! 一体どういう経緯でそうなったんです!?」
焦るクロスは頭を抱える。
アルは生徒が話していた事を伝える。怪しげな奴と歩いていた。その話を聞いてからクロスは黙り込む。
「心当たりはありますか?」
「……いえ、ないですねえ。僕自身怪しいと思った人はいなかったので。それに、いつも僕達は一緒にいましたでしょう? その話が出るのはおかしいのではないですかあ?」
「そうなんですよ。信憑性がないので、僕自身この噂は嘘だと見ています」
「いやあ……意味が分かりませんねえ……」
クロスは紅茶を一口飲んでからため息を吐く。
「その噂、調べてみませんかあ? 噂には元がありますしー」
「やりましょう。クロスさんの印象が悪くなるのは嫌ですし」
「ありがとうございますー、では、話しは後日にしましょうかあ。僕、そろそろ眠たいです……」
「すみません。では、また」
アルは靴を取り出してから窓から出ていった。クロスはその様子を見て「普通に部屋から出ればいいと思うんですがねえ……」と呟いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます