第18話
ティルは反省したのか、アルに関わらなくなってアルは充実した日々を送っていた。朝と昼はクロスに会え、夕方にはミリヤとも会え、時々夜は暗殺者の対応。そんな毎日を送っていたアルは、前世で楽しい! という気持ちを前面に出すようになっていた。
周囲から見れば柔らかい笑顔。元々顔のいいアルは笑うだけで周囲の女子達はきゃあきゃあと騒いだ。前までは嘘の笑顔が多かった為、素の笑顔は周囲に効果てきめんだった。
そんな楽し気なアルの様子を見て「悪名高いのは嘘なのでは?」と「普通の公爵……?」と疑問を与えた。ティルもそんな様子を見て「あれ……あれ……?」と疑問に思い始めていた。
アルはそんな周囲に特に気にする事はなく、今与えられる幸せに浸っていた。
そんなある日、ミリヤとクロスに別の都合があり、暇になったアルは不審な人物がいないかを探しに行っていた。この学園の警備、甘いな……。何故今まで問題が起きてなかったのか。とアルは思った。
「ねえ……聞いた……?」
「うん……」
その時二人分の女性の声が聞こえアルは立ち止まる。気配を消し、何の話をしてるのか静かに聞く。
「シベリウスさんがミリエルさんを嵌めてるって……」
「そんな風には見えないんだけどね……でもシベリウスさん胡散臭いし……」
その言葉を聞いてアルはどういうことだ? と首を傾げる。クロスが僕を嵌める? 何のために? アルは訳が分からなくなる。
そしてクロスの今までの行動を思い返すが、これといったものはなく、アルは女性が話している事が信憑性のない噂なのではないか? と結論をつけた。
アルは二人に気づかれないようにその場から離れた。
女性から離れたが、アルの心はもやもやとしていた。先程の話が妙に突っかかり、もやもやが晴れなかった。
アルはそれに気持ち悪さを感じたがそれを無視し、部屋へと戻って行く。
「あ、ねえミリエルさん!」
「……なんですか?」
道中一般科の生徒にアルは話しかけられる。
「あの話聞きました……?」
「話?」
「シベリウスさんがミリエルさんを嵌めてるって噂。知らないんです?」
「いえ……どういう事か教えて貰っても?」
生徒は周りの目が気になるのかアルを人気のない所へ連れて行く。そして生徒は思い口をゆっくりと開いた。
「シベリウスさん、どうやら悪い人達と手を組んでるらしいんですよ……」
「……詳しく」
「俺も詳しくは知らないんですよ。ただ、怪しげな奴と歩いてたって噂があって……それでミリエルさん危なくない? って話が広まったんです」
「そうですか……情報ありがとうございます」
「いえいえ、では」
生徒の話を聞いてアルは首を傾げる。不審な人物は見逃してきたつもりはなかった。そして一人のクロスに接近するには深夜のみ。でも深夜は僕が出歩いてる。アルはんんん??? と頭に疑問が浮かんだ。
アルは生徒の言葉を思い返す。怪しげな奴。なのに誰も教員を呼ばなかったのは何故か。と考え込み、アルはふと二つの考えに辿り着く。
怪しげな奴は実はここの生徒なのではないか。そしてもう一つは噂が嘘である可能性。アルは嘘の可能性の方が高いと見てその場で納得した。
そして後でクロスに話を聞こうと思いその場を後にした。
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