第15話

「ふあ……」


 次の日、アルは寝不足で欠伸が出た。暗殺者の尋問はすぐに終わったが息の根を止めた後の処分で時間を取ってしまい、睡眠時間が減ってしまっていた。

 尋問の内容から察するに今後も暗殺者や雇われた人が来るのは確実な為、アルは処理を考えないと……と睡眠より別の事を考えた。

 そこでアルは学園から出る前に両親が言っていた事を思い出す。

 何か不味い事があったらこっちでもみ消す。この事を思い出し、多少は頼れるのでは? と流石にこれぐらいで頼るのは……と二つの思考にアルは悩んだ。悩んだ末、自分で処理しようと結論をつけた。それ以外はもみ消してくれる。そうアルは思った。

 

「――あの~ちょっといいですかあ?」

「……誰ですか?」


 背後から声が聞こえアルは振り返る。そこには同じ寮の生徒がアルを呼んでいた。

 右目を黒髪で隠し、ポニーテールな男子生徒にアルはこんな生徒いただろうか。とじっと生徒を見つめた。


「ああ! 自己紹介が遅れましたねえ、僕、クロス・シベリウスです~。貴方の話は聞いてますよお。アル・ミリエルさん」

「そうですか。僕に何の用ですか」


 クロスの笑顔と話し方にアルは胡散臭いな。と思ったが口には出さないでおいた。


「あのぉ、そのですね~?」

「何です……教室に行きたいのですが」

「お友達になってください!」

「……は?」


 思ってもみなかったクロスの言葉にアルは唖然した。そして聞き間違いか? いやでも確かに今友達って……え、え?? と困惑した。

 クロスは手を差し出したまま「あの、どう、なんですかあ」と顔を赤らめた。それを見て更にアルは困惑した。


「き、聞いてますかあ!?」

「あ、はい……僕で、よければ……?」

「本当ですかあ!? ありがとうございます~!」


 手を取るとクロスはパッと表情を明るくさせ手をブンブンと振った。


「何故、僕と友達に……?」

「実は僕、胡散臭いから何か裏がありそうと言われてして~避けられてるんですよお。でもアルさんは~纏ってる雰囲気からして避けられなさそうと思いましてえ。それに僕自身貴方に興味がありましてねえ……?」

「話し方から胡散臭いですから避けられもするでしょうね」

「酷いです! 僕、こう見えて友達とご飯食べたり、お泊りしたりが夢なんですよお!?」


 クロスの言葉に可愛い夢だな? とアルは思い、そしてそれを恥ずかしがりながら言うクロスにアルは胡散臭そうに見えて可愛い人だな? と思った。 


「まあ、よろしくお願いします」

「はぁい。よろしくお願いします~。そうだ! お話しながら教室に行きませんかあ? あとは、あとは、昼食を一緒に食べたりとか……」

「……いいですよ」

「……! ありがとうございます~!」


 クロスの言葉にアルは頷いた。自分に近いように見えてミリヤみたいな人だなと思いつつ、二人は教室に向かった。

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