第13話

 数日が経ち、二度目の戦闘交流会が始まった。

 記憶を消したあの日からティルはアルに関わりだし、アルは段々と機嫌が悪く成っていた。ミリヤに会うと一時的に機嫌はよくなるが、食堂や朝にティルと出会うとアルに苛立ちが溜まっていく。

 ティルはめげずにアルに二人の生徒に何をしたのか、を問いかけてくる。アルは何故そんなつまらない話題にそこまで固執するのか意味が分からなかった。

 避けれる時は避け、アルは今日までティルとは最低限距離を置いていた。同級生は流石にティルの行動に「やめた方がいいんじゃ……」と声をかけていた。


「皆に危険が迫るかもしれないだろ、だから教えて貰うまで諦めない。ミリエル家は悪名高いと噂されてるんだから」


 そう生徒達に説明をしていた。アルは教えたら教えたで更に面倒な事になりそうだったのでだんまりを決め込んだ。

 

 そうして交流会が始まりアルはミリヤと組む。ティルもキリと組んだようで仲良さそうに話していた。

 二組ずつ呼ばれ、戦闘が始まるのを見学席で見る。流石にこの状況でアルに突っかかる程馬鹿ではないティルは、時折視線をアルに向けながらキリと話していた。そんな視線に気が散りアルの苛立ちは増していく。アルの苛立ちを感じ取ったミリヤはなんとか機嫌を直そうと楽し気な話題を出していく。


「次! アル&ミリヤ対ティル&キリ!」

「……行きましょう」

「う、うん……」

「流石にしつこい、腹が立つ」

「そ、そっか」


 思わず素が出る程苛立っているアルは立ち上がり戦闘場に向かって行く。

 今回はアルが短剣を、ミリヤが木刀を取る。その間にアルは素早さ上昇、攻撃上昇の薬を噛み砕く。

 そして戦闘場で待機して笛が鳴るのを待つ。

 ピーッ! と鳴ると同時にアルはその場から駆け出す。


「『ライジング!』アル様! そろそろ教えて貰うぞ!」

「しつこいんだよお前。いい加減にしろ」


 駆けたアルをティルが木刀で止める。アルは苛立ちを抑えつつティルの足を蹴る。

 ティルはそれにすぐに受け身をとり体制を立ち直す。そしてティルが顔を上げると同時にその顔面をアルは殴り飛ばした。


「っ――!!」

「一発殴られても文句は言えないよな? ずっぅぅぅと邪魔してきたんだからな?」


 当たり所が悪かったのか倒れたティルは中々起き上がらない。

 

「アルくーーん!」

「暫く寝てろ」


 キリと応戦しているミリヤにアルは向かう。


「ちょっ……と、二人相手するなんて聞いてないんだけど!!」

「キリシア様はお眠りになりました。はい、お終い」


 キリの背中に周り首筋に短剣を持ってくる。キリははあとため息を吐く。


「降参。二人は無理だわ。ただでさえこの子の相手で疲れてたのに」

「そうですか」

「ありがとうアルくん! 助かったよ~」


 ミリヤとハイタッチしながらアルは戦闘場から離れる。背後から「起きてる?」とキリがティルに声をかけている声が聞こえた。

 アルはすっきりした気持ちでその場から離れ、ミリヤと共に観戦席に戻って行った。

 その後気絶していたティルは保険室へと運ばれていった。

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