第12話
男性が話す事をアルはメモに取りながらキリの到着を待つ。そして、原作に影響しないか? まあ僕という異物がある時点で影響はするか。と話を聞きながら思考する。
「こっちです!」
少し経ってからキリの声と複数の足音を聞き、アルは花を消してマスクを外す。曲がり角からキリと教員達が現れアルは軽く頭を下げた。
「こちら、この方が吐いてくれた情報です。痺れ薬であと20分ぐらいは動けません」
メモを教員に渡し、アルは去ろうとする。
「待ってくれミリエルくん。状況説明をお願いしたいのだが……」
「ティラベル様に頼めばいいと思います。では」
アルは興味なさそうにその場から去る。
そして交流広間に向かいミリヤを探すも、ミリヤの姿はなくアルははあー。と嫌そうにため息を吐いた。
「無視すればよかったか? まあ、明日も会えるからいいが。はあ……」
少し機嫌を悪くしながらアルは寮に戻る。足取りは明らかに悪く、アルを見た生徒はアルから距離を取った。
そして部屋に戻るとマスクをつけ、先程使った自白花を召喚させる。
「花を錠剤に、『チェンジ』」
変化魔法で花を錠剤の姿にする。それをアルは薬入れに作った薬を入れ、自白花の名前をペンで書くとポケットに仕舞った。
「花一つ分で……30分嘘がつけなくなる」
脳内に浮かんだ花の効果に小さな手帳を取り出し、効果の内容を記入する。
そうして書き終わった後、アルは食事をとりの部屋から出て寮の食堂へと向かった。
食事はビュッフェ形式になっており、アルは適当にご飯を皿に乗せていく。
そして人気の少ない角に座り食べ始める。
そうして食べ進めているとアルの隣に誰かが座って来た。ティルだった。
「まだ席はありますよ?」
「聞きたい事がある」
「暇なんです?」
「暇なわけない。昨日貴方が何かした生徒に何があったか聞いたら二人揃って[昨日何したか覚えてない]だったんだけど、何したんだ」
ティルの言葉にアルは、わざわざ聞きにいくなんてやっぱり暇人か? と思った。だが口には出さず、ご飯を食べ続ける。
「聞いてる?」
「先にご飯を食べては? 冷めますよ」
「……それもそうか」
アルの言葉にティルはご飯を食べ始める。その様子にアルはすぐに逃げきれそうだ。と思いご飯を食べ終え席から立つ。
「おい。話……」
「本を読みたいので帰ります。では」
「貴方は……!! 話はまだ終わってない!」
叫ぶティルを無視してアルは食器を戻し寮へと戻る。アルは嘘は言っていなかった。実際本を読みたくなっていた。
追い付かれるのも面倒な為、アルは速足で部屋に戻り鍵をかけた。
そして魔法の本を手に取り読んでいく。何度も見た内容だが、暇つぶしにはなる為アルはじっと本を読み進めた。
そうして暫く読んでいると12時を伝える鐘が鳴った。アルははっと顔を上げる。
「……もう12時。早く寝るか……」
本を仕舞い寝る支度をしてからアルはベッドの中に入って横たわり、眠りについた。
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