第9話

 全員の戦闘が終わった後、交流会が始まった。

 ミリヤが「他の子と話してくる!」と言いアルの元から去った。それにアルは少し悲しく思ったが、顔には出さず遠くの方の椅子に座り、じっと話してる皆の様子を見る。

 そして少ししてからキリが疲れたかのようにアルの元に近づき椅子に座った。


「……お疲れ様です」

「ええ、お疲れ。貴方、輪に入らないの?」

「別に話す事がないので」

「そう」


 キリはつまらなさそうに話を聞きながら、疲れでため息を吐く。

 

「貴方、相方の子に無茶な事させてたけど、あれしなくてもよかったんじゃない?」

「傷つけられたから容赦なくやれると思ったのであれでいいんです。それに思惑通り目的は達成できたので」

「うーわ」


 アルの言葉にキリは苦い顔をする。


「流石ミリエル家、手段を選ばない所悪評通りだわ」

「手段は選んだ方なのですが」

「相方の子に無茶させてその発言は手段選んでないでしょ」

「そうですか」


 そうして会話は終わり二人で輪を見ていると、何やら騒がしい声が聞こえてくる。

 じっと騒がしい方を見るとそこには絡まれているミリヤの姿。


「ねえねえ今度は俺と組まない??」

「あのミリエルのせいで君の魔法見れなかったんだけど、見せてくれない~?」

「い、嫌です! やめてください!」


 ミリヤは一般科の生徒に迫られて困っていた。


「あーあ……一般科の生徒はまた馬鹿やって……ん?」


 キリがアルに視線を向けるとすでにそこにアルの姿はなかった。

 アルはミリヤの元に近づき一人の生徒を足で蹴飛ばし、もう一人の生徒には胸倉を掴んで殴り飛ばした。

 その瞬間周りの温度は下がる。悲鳴を上げアルから距離をとるもの。守るように生徒を庇う生徒。


「あ、アルくん……」

「何を、していたのか、教えていただけますか?」


 冷めた目でアルは二人の生徒を見る。殴られた生徒は鼻血が出たようで鼻を押さえていた。

 もう一人の生徒は酷く怯えた様子でアルを見た。


「アルくん、私なら大丈夫だから」

「何を、していたか、教えていただけますか? 返答次第では殺す」

「ひぃ……!!」

「アルくん!!」


 ミリヤが近づきアルを止める。アルはミリヤを見て微笑む。


「怪我はありませんでしたか?」

「大丈夫だよ、アルくんやりすぎだよ……」

「自業自得です」

 

 にっこりと微笑むアルに周囲は「ひっ」と声を漏らす。

 ミリヤはそんなアルに怯えながら、止められるのは自分しかいないと思い、必死に大丈夫だと伝えた。

 

「無事ならいいのです。……顔は覚えたぞ」

「ひっ、す、すみませんでした!!」

「誰かこのお方を保健室に」


 アルがそう言ってからその場から離れる。恐怖から解放された生徒達は怪我をした生徒に近づき保健室に運んでいく。

 戻ってきたアルにキリは物凄く嫌そうな顔をしていた。


「やりすぎ」

「あの子に害を与えようとしたのです。あれで済んだだけマシでは?」

「……そう」


 光が宿ってない目でキリを見るアルに、キリはこれは突っ込まない方がいいと判断し、適当に答えた。

 その後ゆっくりと元の騒がしさに戻って行った。

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