第8話

 笛が鳴ったと同時にアルが魔法を使う。


「闇はすぐ傍にいる。いつでも、どこでも……『ダークネスルーム』『シャドウ』」


 その言葉と共に戦闘場は真っ暗な空間に包まれる。

 包まれたと同時にアルはミリヤの影の中に隠れる。


「なに!?」

「闇属性魔法か!」


 相手が油断してる声が聞こえるを耳にしつつミリヤは駆ける。


「いっくよ~! 『ファステスト!』」


 魔法を使うと同時にミリヤの足は速くなる。アルは最初にミリヤには見えるように魔法を使っていた為ミリヤにははっきり見えていた。

 そのままミリヤはエルフの生徒を短剣で切った。


「きゃああ!!」

「っ――そこか!!」


 匂いに敏感な獣人の生徒はミリヤの匂いをかぎ取り、匂いを辿りにミリヤに近づき、木刀でミリヤを切った。


「ははっ! ……あの人間は何処だ!?」


 ミリヤを切り付けたと同時に暗闇は晴れる。そしてアルを探す為周囲を見渡す。

 匂いもない、気配もない。一体何処にいるんだ!? と生徒が困惑しているその生徒の影からアルがゆっくりと現れる。

 

「後ろから――!?」

「残念、あと少し遅かったな」


 生徒が振り向くと共にアルは木刀で生徒を切った。


「作戦成功ですね」

「いたた……うん、上手くいってよかった!」

「怪我はしていませんか?」

「うん、大丈夫」


 アルがミリヤに手を差し伸べる。その手をミリヤは取り立ち上がる。

 相手生徒は「やられた……」「影に入るってどう対処すればいいの……」と呟きながら二人にお辞儀をした。

 二人もお辞儀をして二人はその場から離れた。


「アルくん凄いね! もう二つも魔法使えるなんて」

「家で二つ目を使えるように努力したので」


 ミリヤは戻りながらアルに話しかける。

 魔法は最初は一人一つだけ自分専用の強力な魔法が使えた。二つ目、三つ目は努力が必要だった。

 アルはミリエル家にいた時に必死に努力した為、二つ目の魔法が使えていた。

 どちらも暗殺に使える魔法。特に二つ目のシャドウは影に入る事が出来る魔法で、影に入ると匂いや気配は完全に消える為、奇襲には使える魔法だった。

 アルは先に一つ目の魔法で自分達を見えないようにしてからミリヤの影に潜り込み、ミリヤが生徒に切られた瞬間生徒の影に潜りこんで戦闘の好機を待っていた。

 

 影の中では場所によって外の景色が見れるし、中で自由に過ごす事も出来る。一人になりたい時にはうってつけの魔法であった。

 暗闇の空間が晴れたのはわざとそうした。ミリヤに近づく害のある者を少しでも減らす為に。


 アルはちらりと見学席を見る。そこには呆然とするものが多く、アルはこんなものか。とつまらなく思った。

 少しでも恐怖を感じてくれたらミリヤさんに近づく相手が減ると思ったんだが……とアルは視線をミリヤに戻し、見学席に戻りながら先程の戦闘の事を話した。

 

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