第6話
アルとミリヤが友達になってから、二人は度々手紙で連絡を取り合ったり、交流広間で会話したりなどしていた。
お互いの事を知る事から始め、まだ数日しかたっていなかったが少しずつ二人は仲を深めていった。
「そういえば、そろそろ三つの学科で交流会を始めるらしいよ! アルくんはその話聞いた?」
「はい、学科事の戦闘を学び、交流を深める……でしたね」
「そうそう。楽しみ~! エルフ科が魔法得意らしいから、どれだけ私の力が通用するのか気になる!」
「ミリヤさんらしいですね」
ミリヤの言葉にアルは微笑む。アルはミリヤの事を少しずつ知っていけるのが楽しく、この上ない幸せだった。
ここ数日でミリヤはアルに気を許し、言葉を砕けるまで心を許していた。だがアルは言葉を崩さない事にミリヤが問いかけるとアルは「まだ、まだです」と少しだけ微笑んだ。
「あ、そろそろ寮に戻る時間。アルくんまたね!」
「はい。また」
時計を見て立ち上がり去って行くミリヤ。アルはそれをじっと見つめる。ゆらゆらとご機嫌そうに揺れる黒い猫の尻尾を見て、また笑みを浮かべる。
「かわいいなあ、かわいい……」
欲しいなあ。その言葉を呑みほしアルは寮へと戻っていく。
手の届く範囲にいてほしい。でもそれだとミリヤが悲しんでしまう。アルは心の中で葛藤した。
そうして傷がつく程手を握り絞め、アルは欲に耐えた。嫌われたくない。欲しい、悲しませたくない。アルの心はここに来てからぐちゃぐちゃだった。
すれ違う人々がアルの纏う欲を感じ取り、「こわ……」「え、なに……」と呟いているのも気にも留めず、アルは自身の部屋へと戻って行った。
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そうして数日が過ぎ、交流会の日になった。
アルは獣人科からミリヤを探す。そして姿を見つけると少しだけ微笑みを浮かべる。
「今日は全学科の戦闘を知り、交流を深めようと思う。各科から二人組になるように。同じ科からは組まないように! 組んだら座るように!」
その言葉を聞いてから生徒達は別の学科から相手を選びに行く。アルはすぐさまミリヤの元に行くと、すでに一人の生徒が一緒に組もうと誘っている場面だった。
「駄目~?」
「えーと……」
「ミリヤさん、一緒に組みませんか?」
「――アルくん!」
「え、アンタ何? 今俺が誘ってんだけど」
生徒を無視してアルはミリヤの手を引こうとする。
「おい、先に誘ってたのは俺だぞ!?」
「……ああ、失礼。見えてませんでした」
「はあ? アンタ、どこの者だ?」
「ミリエル家ですが? 貴方こそどこの者でしょうか?」
アルの言葉に生徒は顔を真っ青にする。
「み、みみみミリエル家!? な、なんでもない!」
「よかった。ミリヤさん、行きましょう」
「うん。ねえアルくん、ミリエル家って何かあるの?」
「さあ? 僕はそこまで詳しくはないので」
さらっと嘘を吐くアル。ミリヤは「そう……?」と疑問に思いながら手を引かれる。
少しだけ他と距離を取り二人は座る。そして少ししてから全組が座った。
「では、呼ばれた者は戦闘準備をしてもらう。見学はあそこで見学しなさい。作戦会議は事前にしておく事!」
その後生徒達が呼ばれ、二人は見学席に向かって観戦を始めた。
「楽しみだね!」
「はい、学べそうな所は学びましょう」
「だね!」
心を躍らせるミリヤを見ながらアルは心が満たされる感じがした。そして学べる部分を探す為に観戦を始めた。
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