第5話
授業が終わった後アルはいつものように全科の校舎に行き、交流広間に向かう。
目的はミリヤが来ているかどうか。許可がないと獣人科やエルフ科に行けない為、アルはこうして全科の交流広間に来ていた。
許可がいる理由は問題を起こさせないようにしていた。人種差別をする者が度々いる為、こうして教員の許可がなければ出入りが出来なかった。
アルは辺りを見渡しながらミリヤを探す。
今日こそは。今日こそは来ているだろうかと、胸を躍らせる。
そして見渡していると獣人校舎から見覚えのある太陽を見つける。
周りに獣人科の友人を連れたミリヤが、交流広場に来た。
アルはミリヤを視界に入れるとすぐさまミリヤの元に行く。ミリヤの近くにいた友人は、アルが走ってきている事に驚きその場で立ち止まった。
「ミリヤさん」
「アルさん? どうしたんですか?」
ミリヤの言葉に友人は「知り合いなの?」と問いかける。ミリヤは「初日に会ってて」と友人に言った。
「貴方に会いたくて、会えてよかった」
「あ、ありがとうございます。どうせならお話しますか?」
「はい、是非」
嬉しそうな顔でミリヤの微笑んだのを見たミリヤの友人は、声を荒げた。
「あ、あー私用事思い出したから、戻っておくね!」
「え? う、うん……」
「アルさんと仲良くね!」
ミリヤの友人は口パクでアルに、頑張れと言った。アルはそれに少し頭を下げた。
そしてミリヤの手を優しく掴む。
「人気のない所でお話しましょう?」
手を引き歩き出すアルにミリヤは「は、はい」と今から二人っきりになる現状に頬を赤らめた。
そうして人気のない端の椅子に二人で座る。
「あの、どうして私に構うんですか?」
「好きだからです」
「えっ……えっ!?」
「貴方に一目ぼれしました。一緒にいてください」
「あの、え、あの……! お、お互いの事も知らないのに……」
アルの言葉にミリヤは顔を真っ赤にして慌てだす。
そんなミリヤをアルはじっと見つめ首を傾げて「駄目ですか?」と言った。
ミリヤは「えっと、その」と言葉に詰まり、言葉を探す。だがアルに見つめられ上手く言葉が出てこなく顔を俯かせた。
「あうう……」
「ミリヤさん?」
「お、お友達からで!!!」
そうしてひねり出した答えはこうだった。
ミリヤは顔を覆ってひいと声を漏らした。
アルはその言葉を聞いて、友達。と言葉を繰り返す。友達とは具体的に何をすればいいのか。そう考えながらミリヤの言葉に了承した。
「友達のやり方が分からないですが、よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします!」
ミリヤとアルは握手をする。アルはミリヤの手の平が暖かい事に気づき、本当に太陽のようだと感じた。
「わ、わわ私は寮に戻るね! あ、アルさん、また!!」
「はい、ミリヤ。また」
「ひぃい……それは反則……!!」
ミリヤは踵を返し獣人寮へと戻って行った。それをアルはじっと見つめ、少し違ってしまったけど手に入れられた。と笑みを浮かべた。
「かわいい……なあ……」
ぽつりとアルの口から言葉が零れた。
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