第4話

 歓迎会が終わった深夜、アルはふと目を覚まし寮の外から出る。

 月を見上げアルはふぁと欠伸をしながら歩く。暫く歩いて全科の校舎に入った時、背後から気配を感じ即座に注射器を取り出しその場から飛び退く。

 そこにいたのは歓迎会で問題を起こしていたキリだった。


「貴方、危ない事しないで頂戴」

「…………申し訳ありません。てっきり暗殺者が来たのかと思いました」

「貴方、普段どんな生活してるのよ」

「お気になさらず」


 注射器を仕舞いながらアルはキリに会釈をする。


「貴方の名前は?」

「……アル・ミリエル」

「ああそう。ミリエル……ね。あたしはキリ・ティラベル」


 ミリエルの言葉にキリは少し声の高さを下げた。だがすぐに元の高さに戻し名を名乗った。


「貴方は何故ここに?」

「目が覚めたから夜風に当たりに来たのよ。貴方は?」

「同じようなものです。もう帰ります。では」


 アルはキリの横を通り過ぎる。そのアルの後ろ姿をキリはじっと見つめていた。


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 それから数日が経ち、アルは学園に慣れ始めていた。

 本日の授業は人種と魔法属性の話だった。

 この世界にはエルフ族、獣人族、人間、そして意思疎通の出来ない魔物が存在していた。

 エルフ族は耳が尖っており、魔法に特化した使い手が多い。獣人族は獣耳が生えていて、物理に特化した使い手が多い。

 魔法は獣人族も使えるが、魔法攻撃ではなく強化方面の魔法を使う事が多い事をアルは知った。

 アルはその授業を聞きメモを取りながらミリヤの事を思い返す。彼女はどこを強化するのだろうか。力? 素早さ? それとも耐久力? アルはミリヤに会ったら魔法を見せてもらいたい。と手で口を抑えながら笑みを作った。

 次に魔法属性の話が入った。

 属性は火・水・土・風・光・闇に分類されている事。その中で自分に合う属性が一つだけある事、自分に合った属性以外を使う場合、合う属性とは違い威力や効果は半減する。

 アルは原作ではティルは光、キリは風。ミリヤは何の属性なのだろう。あの見た目だから光が合ってそうだ。と考え込んだ。


「属性調査はこの後魔法室で行う」


 その言葉に周りの生徒は「おおー」や「何の属性だろう……」と心を躍らせる者が多かった

 本来ならば学園で初めて知れる属性。だがアルはミリエル家で属性を知った為、特に心躍る事はなかった。

 闇。それがアルの属性だった。

 

 その後授業は終わりアルは伸びをした。

 そして同級生と共に魔法室に向かう。

 移動中アルの近くには誰も近寄らなかった。アルはその事にさほど興味を示さず魔法室まで向かって行った。


「ここで属性調査を行う。この魔法水晶に手をかざすと色が変化する。赤が火、青が水、茶色が土、緑が風、黄が光、黒が闇だ」


 その言葉を聞き順番に水晶に手をかざす事になった。最初の方のアルは水晶に近づき手をかざす。

 すると――。


 パンッ——。


「……割れましたがどうすればいいでしょうか」

「え、あ、ま、待ってなさい。追加の水晶を持ってくる。ミリエルくんは闇属性だね、破片に気を付けて」


 水晶が黒く染まった瞬間水晶が割れた。アルは原作にこんな事あっただろうか。と思った。

 そして水晶が割れた事で周りがざわざわと騒がしくなった。「割れるの……?」「何したんだ……?」などひそひそ声。

 アルは破片を踏まないようにその場から離れ、壁にもたれかかる。そしてじっと皆の属性を観察した。

 同級生が次々と手をかざすと様々な色が浮かぶ。予想とは違う属性に驚く者や、属性が判明した事で喜ぶ者、様々だった。

 そしてティルの番が来て手をかざす。黄。原作と同じ光属性だった。

 それを見てからアルは視線を落とし、転生特典で貰った能力でどんな薬を作ろうか考え込んだ。


『フラワーハピネス』

 

 花の幸福。どんな花でも作る事が出来る能力。オリジナルの花でさえ作れる。

 触れたり匂いを嗅ぐと痺れる花、匂いを嗅ぐと眠ってしまう花や、記憶を忘れさせる花等。

 アルは攻撃上昇や魔法力上昇が出来る花を作って、錠剤にしてみようかと思考した。

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