第2話

 馬車が学園前に着く。アルは馬車から降り鞄を取り出す。

 学園前には複数の馬車が止まっており、そこから生徒達が出てきていた。

 アルは一瞬だけ出てくる生徒達を見てからそのまま学園内に入っていった。

 そして入学案内の看板を見ながら大広間へと向かう。

 向かった先には椅子が大量に並べられた大広間。アルは指定された椅子に座り目を閉じて入学式が始まるのを待つ。

 そうして少し経ってからざわざわと騒がしくなっていくのを耳にし、目を開ける。見える限り見渡すと沢山の生徒がすでに集まってきていた。獣人、エルフもちらほらと視界に映っていた。

 

「静かにしなさいー」


 前方から声が聞こえアルは前を向いた。その後学園長がやってきて入学式が始まった。


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 入学式が終わりアルは教室に向かう。案内の紙を見ながら歩いているとドンッと誰かにぶつかった。


「――あ、大丈夫です……か」

「いてて……あ、大丈夫です! ごめんなさい! 急いでるので!」


 相手は尻餅をついたようで倒れていた。手を伸ばし声をかけその姿を見た。

 太陽のような金髪。下のほうは白くなっており、髪にさらに輝きを与えてるようだった。空のような水色の目。そして特徴的な黒い猫耳。

 綺麗。アルはその姿に見惚れた。

 女性はすぐに立ち上がり頭を下げその場から去っていった。

 その後ろ姿を見ながら目をぱちぱちと何度も開閉する。

 

「綺麗だった……」

 

 そう呟き顔を上げアルは教室の方に向かった。

 教室に向かうとすでに複数の同級生が椅子に座って、机の上に置いてある教科書をペラペラと捲ったり、近くにいる生徒に話しかけたりとしていた。

 アルは席の場所を見てから椅子に座り教科書をペラペラと捲る。

 少しすると生徒がざわめいているのを感じ顔を上げる。そこには白髪に赤メッシュ。右目青目、左目赤目の男子生徒だった。

 その姿に既視感を感じ記憶を探ると男子生徒が主人公のティル・キリシアの容姿に似ていることに気づいた。

 あのお方が主人公なのだろうか。アルはじっと男子生徒を見つめる。

 男子生徒は周りの生徒に群がられていて少し困っていた。

 話は「何故両目が違うのか」「どこの家のものなのか」など男子生徒に迫っていた。


「両目が違うのはこっちが魔法でできた目だから、俺はキリシア家のティルです」


 ティルは困ったような顔をしながら青目の方を指差しながら説明した。

 アルはそんなティルを少しの間見つめてからまた教科書に視線を戻した。


 その後担任がやってきて自己紹介を始めた。アルは最初だった為最初に自己紹介をする事になった。


「アル・ミリエル。よろしくお願いします」


 簡単な自己紹介をしてからアルは席に座った。周りは「あのミリエル家?」「ミリエル家かあ……」とひそひそと話していた。

 そして自己紹介を進めているとティルの番になった。


「ティル・キリシアです。ここに入学式できてとても嬉しいです! 皆様よろしくお願いします!!」


 頭を下げ座るティル。アルは自分とは違う人種だなと心の中でぼやいた。

 明るく、善そのもののような人間。暗く、悪に近い自分とは真逆だ。とアルは窓を見た。

 空は明るく、その色が教室に来る前にあったあの獣人の女子生徒のように見えた。

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