第15話

 流歌先輩は顔を赤く染めながらも、僕の手を自身の胸に触れさせていた。確かに膨らみは感じられたけど僕にとっては物凄い衝撃だった。

 あの先輩の胸を合法的に触っちゃった……。


「航君はやっぱり大きい方が好き?」


「……そういうのはない、です」


「そっか……変なこと聞いてごめんなさい」


 先輩は僕の手をそのまま握って、僕の隣の席の椅子を持ってきて隣に座ってきた。

 すぐ横に先輩が居ることで再び僕の心拍数は上がっていく。


「ねえ航君。明日もお弁当作ってあげよっか?」


「宜しいんですか……?僕なんかの為に……」


「全然いいよ。一人分増えたとこで大した事無いから」


「では是非お願い致します」


 また明日の楽しみが出来た。

 それに先輩の手作りだから凄く楽しみなのと、先輩と過ごせる事がとてつもなく嬉しい。


「ふふっ、何かリクエストとかある?私、ある程度なら作れるよ?」


「えっと……ハンバーグを」


「ハンバーグ、ね。分かった」


 僕の好物のひとつであるハンバーグ、それを先輩が振る舞ってくれると分かると僕は頬が緩む。

 どんな味がするんだろう?勿論母さんが作るハンバーグも好きだけどね。


「じゃあそろそろ帰ろっか」


「はいっ」


 僕と流歌先輩は一緒に学校を出て、駅前までずっとお互いの傍を離れずに帰路に就いた。

 ああ、早く明日にならないかなぁ?凄く待ち遠しい。







 ☆★☆★☆









 駅前に就いた僕と先輩はお互いの家路が反対方向な為、ここで一旦お別れとなる。

 ちょっと寂しいけどまた明日と思い込んだその時だった。


「航君」


「はい?っ?!」


 今、何が起きた……?突然の事で僕の頭の中が真っ白になった。


「また明日……っ!」


 先輩は僕から逃げるようにその場を立ち去り、駅の中へと消えていった。僕は流歌先輩が触れた頬を触れると更に顔が熱く熱を帯びていく。

 今キス、されちゃった……?


「う……ぁっ」


 明日どんな顔して先輩に逢えば良いんだろ……?

 そんなことを考えて顔が火照ったまま、家に着いてもまだ顔は熱かった。


「……ただいま」


「あ、お兄ちゃんおかえりー。どうしたの?お顔赤いよ?」


「えっ?あ、あぁ……風邪とかじゃないから大丈夫」


「何かあったら言ってね?」


 咲愛は心配そうに僕を見つめて、僕の傍を片時も離れようともしなかった。今の僕にはそれが少し有り難かった。

 僕が落ち着き始めた頃、隣に居る咲愛は僕に抱きつきながらすやすやと寝ていた。


「咲愛、いつの間に……」


 今寝ちゃうと夜寝れなくなるのに……大丈夫なのかな?

 そんなことを考えていると玄関の扉が開く音が聞こえ、時計を見るとそろそろ母さんが仕事から帰ってくる頃合いだった。


「おかえりなさい」


「ただいま、航。ってあら、咲愛寝ちゃったのね」


「気付いたら寝ちゃって……大丈夫かな?」


「ふふっ……本当甘えん坊ね。お腹空いたでしょう?今からご飯作るわね」


 母さんは今仕事帰りなのに、それに対して何も出来ずに居るのが申し訳なく感じた僕。

 せめて後片付けぐらいは僕がしたいけど……咲愛が起きない限りはずっとこのまま。父さんが居たら少しは違ったのかなって時々思ってしまう。


「んんっ……ぁ、ママおかえりぃ……」


「ただいま、それとおはよう咲愛。今からご飯作るから顔洗ってきなさい」


 咲愛はこくんと頷いたけど、それでも僕から離れようとはしなかった。咲愛も咲愛で何かあったのかな?

 いつも寂しい思いさせてるから……。


「おにい……ちゃん……」


 咲愛は一体何の夢を見ているのかは置いといて、そろそろ洗面所へ連れていかないと夜ご飯が出来てしまう。

 一体どうすれば良いのか、優柔不断な僕には分からなかった。

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