第13話 宣戦布告 #流歌視点

 昼休みに朝から頑張って作ってきた手作り弁当を私の後輩である航君に振る舞い、大層喜んでくれたのが嬉しくてつい彼の顔に手を添えた私は気がどうかしてた。

 なんであんなことしちゃったんだろ……あんなの私が航君に気があるって言ってるようなものじゃない!


「例の彼と良いことでもあった?」


「っ?!な、なんだ……凪沙か。驚かせないでよ」


「驚かしたつもりはないのだけど……それよりも私の質問に答えてくれるかしら?」


「何もないよ。いつも通り」


 そう、いつも通り。楽しく食事を共にしただけ。

 それ以上もそれ以下もない。


「……にしては顔が赤く見えるのは気のせいかしら?」


「き、気のせいよ」


 うぅ……凪沙には隠し事なんて出来ないか……。

 私の事になると人が変わったようにすぐ元気になるんだから厄介この上ない。


「まあ流歌にも聞かれたくないことはあるだろうからこれ以上は追求しないでおくけど、貴女にお客さんよ」


「へっ……?私に?」


 私にお客?こんな時期だからまさかとは思ったけど、全くの見当違いでなんなら女の子だった。

 ただその女の子は私を見つけるとさっきよりも険しい表情へと変わっていき、私は恐る恐る彼女に話し掛けた。


「私に何か用……?」


「どうも、先輩に話があってきました。ここじゃ話しにくいので場所を移しても宜しいですか?」


「全然良いけど……」


 私は彼女の後に着いていく。何故指名されたのか、何故彼女が私に対して敵意剥き出しなのか、私が彼女を怒らせるような何かをしてしまったその原因を探る為に。








 ★☆★☆★









 連れてこられた場所は屋上。

 初めて来たけどすっごく寒くて、でも何処か静かな場所で航君と過ごすのに丁度良さそうと考えていた時。

 先程よりも敵意剥き出しで私を睨み付けていた。


「それで……私に話って?」


「単刀直入にお伺いします。村越君と先輩は交際しているのですか?」


「それは……」


 何故か即答出来なかった。

 ここでもし彼と付き合ってると宣言してしまうと、自分の中で何かが弾ける感覚があったから。


「……やっぱり、村越君に無理強いさせたんですか?」


「そんなことないよ?!ちゃんと説明した上で……」


「説明……そうですか……」


 うぅ……何故だか彼女が怖くなってきた。

 航君と彼女に一体何の接点があるのか、非常に気になっていた。


「改めて先輩にお伺いします。村越君と別れてください」


「どうして?!第一なんで見ず知らずの貴女にそんなことを……!」


「私は村越君と同じクラスメイトでそれでいて私は村越君の事が好きなんです」


 まさか私の他にそう言う人が居ただなんて……初めて知った。ん……?私の他に……?ち、違う!別に彼とはそういう関係には……!


「だから別れて欲しいんです」


 一方的に別れろと言われてはいそうですかと行くような話じゃない。もし頷けば、航君が何処か遠くへいってしまいそうなそんな感じがしてならない。

 それに胸の奥がチクリと痛み、こんな子に負けたくないという気持ちで一杯だった。


「それで私に宣戦布告しに来た訳ね」


「はい、先輩と村越君とじゃ釣り合いませんから。私の方が彼の隣にこそ相応しいと思います」


「ところで貴女、名前は?」


川越悠希かわごえゆきと言います。以後お見知りおきを」


 川越さんは私に宣戦布告をしにわざわざやってきた。

 私はそんな川越さんに航君との関係を断ち切れと言われ、向きになった私は航君を盗られたくないと思うようになった。

 もう二度とこんな想いをしたくないから。

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