第10話
遅刻しそうになった朝礼になんとか間に合った僕は大樹に怪しまれながら席に着く。
流歌先輩、ちゃんと間に合ったかな……?僕のせいで遅刻してしまったら申し訳なくなってしまう。
「後でちゃんと聞かせろよ?」
「……分かってるよ」
僕は最初からそのつもりだったんだけど、こうも圧が強いとは……。先が思いやられる。
考え込んでいる内に担任がやってきて、朝のホームルームが始まる。
出欠を取りながら和気藹々とクラス中が賑やかになるこの時間は嫌いではない。僕は外の風景を眺めながら終わるのを待った。
「ちゃんと全員居るわね。もうすぐ冬休みだけどあまり羽目を外しすぎないように」
そっか、もうクリスマスって昨日上田さんも言ってたっけ。
今年はどうなるのかな?また家族と過ごすのかな?それとも……。
「じゃあ話聞かせて貰おうか?」
「へっ……?あ、もう終わったんだ。ここじゃ話しづらいから場所移しても良いかな?」
「そんなに言いにくいのか?」
「うん」
先輩が嫌がっていたのは今日の朝で十分知れたから。
嫌がってた割にはなんか可愛かったけど……何かあったのかな?いや普段から可愛らしい人ではあるんだけども!
「私も良いかな?駄目なら駄目で良いんだけど」
「上田さんも良ければ、大樹良いよね?」
「おう。俺達の仲を取り持ってくれてる件も含めて恩返ししたいと思ってたからな」
「じゃあ一旦廊下で」
僕と大樹、上田さんの三人で一旦教室の外へ。
誰も居なさそうな所へ移動した後、本題に入るんだけど今朝の件は黙秘権を行使。
特に上田さんから何言われるか分かったもんじゃない。
「なるほどな……あの滝川先輩がお前にねぇ」
「僕だって信じられないよ。他に適任者入る筈なのに……そもそも年下だし……気が弱いし……」
「でも先輩は村越君を選んだ訳でしょ?理由はどうか分からないけど信頼されてる証拠よ」
そういや先輩も言ってたっけ……僕を信頼してるって。
「まあとにかく!今は先輩との距離を縮める大チャンスだ!しっかりやれよ?」
「う、うん……頑張って、みる」
まずは先輩と一緒になると、時折頭の中が真っ白になる癖は何とかしないと……。これだけでも変われる筈……。
特に何事もなく昼休み。
僕は席で整理をしていたら、なんとまた流歌先輩がやってきた。ただ今回は僕みたいに一部の人しか気付いてない。
何事もなかったかのように席を離れ、先輩の元へ。
「ごめんね?本当は待ってた方が良かったんだけど……皆が煩くって」
「大丈夫、です」
「そう?じゃあ行こっか」
先輩は優しく微笑み掛けて僕の手を繋ぐ。チラリと先輩の横顔を盗み見ると顔が若干赤く染まっていた。
人の声が少しずつ聞こえなくなってきて、今は先輩の息遣いと僕の心拍音しか聞こえない。
僕の教室から数分後、朝に約束した空き教室に到着。
「あの先輩、お昼は……?」
「私が作ったお弁当を食べて貰うから」
えっ……?先輩がなんで僕なんかの為に……?
「航君、成長期なのにあの量は駄目だよ?もっと一杯食べないと」
「そんな!悪いですって!」
「良いから食べて!一応擬似カップルなんだから……これぐらいさせてよ」
先輩の顔が更に赤く染まって僕は何も言えなかった。
いや、そんなの言える訳がない。だって流歌先輩、今まで見たことない程に頬が赤く染まってあんなに恋する少女のような表情をしていたから。
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