第7話
駅前のバス停で滝川先輩を探していたら、先輩の友人の一人で東雲先輩と邂逅。僕達二人をからかう姿はとても印象的で滝川先輩は時折不満を僕に対してぶつけてくる。
それでまたいざこざが起きて気付けば他の先輩達に囲まれてしまった。
「ねー流歌。この子があの例の?スッゴい可愛いー」
「ひゃー、流歌やるじゃん!よく捕まえたね?」
「ねえ君は流歌の事どう思ってるのー?」
見知らぬ先輩達に囲まれた僕はおろおろと滝川先輩に助けを求めようとしたら、既に先輩が間に入ってくれていた。
僕にはそれが格好よく見えた。
「皆止めて!村越君はその……か、彼氏なんだから!」
「えー、別に良いじゃんかー」
「そうよそうよ。もう少しぐらい交流させてよー」
「駄目ったら駄目!行こっ、村越君!!」
僕は先輩に連れられて人気が少ない場所へと移動する。
ある程度のところで立ち止まった先輩は、先輩は泣きそうな表情で僕を見ていた。
「……村越君も嫌なら嫌ってはっきりと言って」
「す、すみません……」
「全く……鼻の下伸ばしすぎ」
あそこまで女性に囲まれるなんて、今まで経験のしたことがなかったせいで先輩を怒らせてしまった。
でも先輩は頬を膨らませて不満そうな表情で僕を見ると、昨日のように僕の腕に絡み付く。
「バレないようにちゃんと付き合ってる風に見せないと駄目なんだからね?」
「は、はい……っ」
だが滝川先輩の事を変に意識してしまい、上手く出来たかは分からず学校に着いた。
着いた後も同じように皆にからかわれて、先輩は僕を人気もない空き教室へ連れていく。
「はぁ……本当にもうっ」
「すみません……上手く立ち回れず……」
「まあ初日だから多めには見るけど、明日からはちゃんとしてね?一応信頼してるからこうして頼んだ訳だし」
信頼、してくれているんだ……。
「じゃあ次はお昼休みに、今日も学食?」
「はい。先輩は?」
「じゃあその、終わったらで良いからここに来て」
「は、はぁ……分かりました。ここに、ですね」
先輩の考えはよく分からないけど呼ばれた以上は約束は果たさないと、な。
滝川先輩は僕の顔をチラチラと見ては目を逸らし、今日はなんだか先輩が可愛く見えてきた。いや見ようとしているのかな。
今この時間が心地好くて僕はまだ離れたくなかった。
「……先輩」
「へっ……?な、何?」
「もう少しだけ、居ても良いですか?」
「っ……う、うん」
やった……っ、もう少しだけ先輩と一緒に居られる……。
このまま解散してたら僕は確実に暴走したであろう。
「今日の先輩……一段と輝いて見えます。あ、普段からそう見てると言うか……」
「そ、そう……ありがと」
先輩の顔が赤く染まり、目線を合わせてくれなくなってしまった。なにか変なこと言ってしまったのだろうか?
それとも照れてるだけ……とか?
「……ねえ、私達もさ。他の人達のように下の名前で呼び合わない?その方がそう見えるかな、って……」
「分かりました。では……る、流歌先輩」
「っ!な、何かな?わ、航……君」
なんだこのむず痒い感覚は……?!滝川先輩が……僕の事を名前で呼んでくれたってだけなのに……。
さっきより顔が熱く、鼓動も先程よりも酷く騒がしい。
よく分からない感情に支配されて、朝の朝礼のチャイムが鳴るまで僕達はずっとこの教室に居座っていた。
先輩は名前で呼ばれてなんて感じたんだろう……?一緒の気持ちだったら嬉しいな……。
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