第4話 彼を選んだ理由 #流歌視点
今隣に居る男の子は私の唯一の後輩。名前は村越航君。
頭は良いと聞いたことがあって、なんでも一学期に最上位にいたとか。本人曰く偶然とは言っていたけど、そうは思えなかった。
「ふふっ」
村越君はとても礼儀正しくて、ちょっとした気遣いが出来るんだけど今はそうでもないらしい。
私は思い切って彼の腕を絡ませてるけど、顔を真っ赤にしてとても可愛い。勿論私もちょっとだけ赤い。
私は村越君のことは好きであるけど、一人のそれは後輩として。その事で友達に色々と詮索されたりしてる。
今日の朝なんてあれで付き合ってないは嘘なんて言われちゃったんだよ?本当に付き合ってないんだから仕方ないでしょ。
「先輩?」
「んー?なあに?」
「いえ……険しい表情だったので……」
あちゃー……また顔に出ちゃったか……。治そうと努力してるんだけどねぇ。
困らせちゃった、かな?
「ごめんごめん。本当になんでもないよ」
「……悩み事でしたら全然、言って貰って大丈夫です」
……ほらすぐそうやって優しくする、本当に村越君は。
「そういうこと……他の子にはしちゃダメだからね?」
「えっ……それってどういう――」
「とにかくっ!ダメなものはダメなの!」
私が村越君を選んだ理由、それは他に頼める人が居ないから。同級生や先輩は同性は居ても異性が居ない。
だから村越君に頼らざる得なくて、嫌な顔せず二つ返事で承諾してくれた時は結構嬉しかったなぁ。
それに最近は村越君と過ごす方が楽しいと思える時間が増えていた。友達も大事なんだけど、唯一の後輩である村越君との関係性を捨てたくないから。
「あ、あの先輩」
「何かな?」
「どうして僕を彼氏役に……?先輩なら他にもいろんな方がいらっしゃると思うのですが……」
「他に頼める人が村越君しか居ないの。同性の友達しか居ないから……」
あの時にちゃんと説明すべきだったのは反省。急に言われたら誰だって理由が気になるもの。
これで友達から弄られても多少は誤魔化せると思い、村越君を利用することになってしまった。
「先輩……」
「私がもういいって言うまでは協力してほしいの。勿論お友達にこの件を話しても良いけど、お友達までだよ?」
「分かってます。先輩にも秘密にしなければならないことがあることぐらいは」
「ありがとう、やっぱり村越君に頼んで良かった」
やっぱり優しいなぁ村越君は……。もし同級生だったら私放っておけないかも。
長話も終わるとバスが到着し、私達はいつも通りに一緒に乗り込む。そういや村越君って彼女さんとか居るのかな?
「先輩?僕の顔に何か付いてます?」
「え?ううん!なんでもないよ!」
私ってばすぐ顔に出ちゃうんだから……。
今日は色々と疲れちゃった……ちょっとぐらい寝ても大丈夫、よね?
「ふあぁ~……少しだけ肩借りても良いかな?」
「ど、どうぞ……」
私は村越君の肩に頭を乗せると急に睡魔が襲い、ゆっくりと意識が途切れた。
彼との偽りの恋人関係はいつ頃終わってしまうのだろう?という感情を抱きつつ。
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