第3話 高台の公園
家に向かう車の中で光波はウトウトしていた。流れるBGMが心地いい。
隣でハンドルを握る綺麗な青年の名は
朝比奈 流摩。彼の正体はお母さんの妹の息子。簡単に言えば従兄弟だ。
昔は流摩と羽咲とよく遊んでいたらしいが
全く記憶にない。普段は警戒心の強い光波だが、今日は特別に眠たかったのだろう、
上京する1週間前から緊張と不安で寝不足気味だったのだ。
~♪♪ ~♩
『、、、み』『、、、なみ』
(誰?)
『おーい!みなみー!!』
(誰か呼んでる。誰だろう)
「みなみ、、、みなみ。着いたよ」
(あ、、、、あれ?夢か)
「ふっ、、寝ぼけてんの?着いたよ。少し歩こう」
「ここどこ?」
「ん?ちょっと寄り道」
流摩はそう言うと公園の中を歩いていった。
緑と風が心地良い高台の公園。
「あ、、、あれ富士山?」
「うん。綺麗だろ。昔ここでよく遊んだんだ。俺と光波と羽咲と、、他にも何人かいたな。さすがに全員は覚えてないけど。確か俺は6.7歳くらいで、2人は4歳くらいだったかな。毎日楽しかった。なのに何で覚えてないんだよ」
そう言うと流摩は横目でチラリと光波を見た。光波はバツが悪そうに目線を逸らすと
夕焼けに染まる東京の街を眺めた。
「東京で過ごした記憶がないねん。街も
人もお母さんも、、、何でやろ。こんな風に昔の話しても何か他人事というか、しっくりこうへん」
「ふ~ん、、、っはは!確かにしっかり大阪の人になってるな。やっとまともに話したと思ったら。俺好きだよ。大阪弁」
流摩はベンチに座るとしばらくの間笑っていた。
「ふふ、、、どんだけ笑うねん」
光波も思わずつられて笑い、静かな住宅街で2人の笑い声だけが響いた。
「そういや良く遊んでた人の中にあたしと同い年くらいの男の子もおった?」
「あ~。いたような気もするかな?俺も2人以外は曖昧なんだ。どうした?」
「いや、聞いただけ」
ふと、さっき見た夢を思い出した。
『おーい!みなみー!』
ダイヤモンドを散りばめたような大きな川の向こう岸で手を振りながら名前を呼ぶ少年。
逆光で顔は見えなかったが、彼も昔遊んだ友達の1人だったのだろうか。
しばらく話しているとすっかり夜になっていた。
「そろそろ帰ろうか」
「うん」
東京に着いて3時間。まだまだ先は長い。
「あ!!お母さんに連絡してへん!!」
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