第七話 恥ずかしい話に蓋
「本当にすまない、君に言った通りこんなことになるとは…………」
「いや、俺もまさか即日処刑されるとは思わなかったよ。勇者の影響力なめてた」
処刑寸前のパラドは何とか勇者によって救い出された。いろいろ強硬手段をとったが一応助かったので感謝しておく。
結局はパラドの予想通り彼が勇者パーティーと認識されず、危ない目にあってようやく勇者たちは自分たちの影響力に気づかされた。
「なんか面白くない。村人っぽいの一人お使いさせるだけでここまで苦労しなきゃいけないの?」
「今回は私たちの失態です。命の尊さを教えると言ったのにこの失態…………」
不満を漏らしたのが魔法使いで肩を落としているのが僧侶だ。彼女たちにとっても予想外の出来事だったと取れる。
なぜこのような事のなったかの自覚がないのが最も痛いところである。謝る勇者を横目にパラドはそう思った。
恐らくだが勇者の取り巻く環境は恵まれていたのだろう。常にちやほやされつつ自分はあまり周りをよく見なかったのだろう。どれだけ信仰されているか知らずに。
「今度からは叩きのめしてでもこの人は私たちのパーティーと承認させます」
「叩きのめしちゃダメなんじゃないかなぁ?」
「いいえ、体に教え込まなければならない場合もあるのです!」
「ちょっと勇者パーティー物騒な人多すぎませんかね?」
「あ、あはは…………」
これでも頼りになるんだけどね、と言いたそうな顔をして苦笑いをしている勇者様だが視線を逸らされたので自覚はあるのだと信じたい。
「まあ、それはそれ、これはこれで今日の予定は?」
「先ほどまで自分の身が危なかったと言うのにのんきですね」
「言わせてもらうけど自分の身より世界の方を取るべきだと思うんだよね。そこらへんどうなんですかね?」
「悔しいけど一理あると言わざるとえないわ。私たちは戦争を終わらせるためにいるんだから今日に固執するより明日のことを考えた方が現実的だわ」
そう、彼らは世界を救うために選ばれた勇者である。
たった一人にかまうより世界のために動かなければならない使命を帯びたものであるがゆえに日々精進し襲い掛かる障害を倒さなければならないのだ。
「えっと、とりあえず今日は1日休んで明日に狩りを行う予定だよ」
「狩り?やっぱ魔物とかか?」
「そうだ。魔物という害獣には食えるものと食えないものがある。その食えるものを私たちが狩りに行くのだ」
「この重戦士さんって食い意地張ってるのか?」
「女性に対して失礼だな、重い鎧を維持するために食事が必要なだけだ」
声に抑揚があまりないがまるで私怒ってますよと身体で表現するように手をブンブン振っているがその一撃は力加減を知らず狼の頭蓋を砕く凶器である。
割と近くにいたパラドはそっと距離を取り再び勇者に向かい合いどうなのかを視線で聞く。
「まあ、旅の保存食として必要になるのは間違いなよ。それに毛皮とかを売って狩りじゃ得られない物とかを買うお金にしてるんだ」
「あれ、結構な報奨金を貰ってるとか風の噂で聞いたけどあれは嘘だったのか」
「…………嘘ではないんだけれどね」
勇者が苦笑いしながら目をわずかに魔法使いに向けた。
僧侶は顔は笑っているが目が憤怒を現しており、パラドがこのパーティーに入る少し前に加入した重戦士は何のことか分からず首をかしげている。
その一方で魔法使いが滝のような汗をかき目を逸らしているので何かやらかしたのは明白だった、しかしパラドは寛大な心で追及することはなかった。
やぶ蛇は地元でやるだけで十分、命をかける必要もない。
「で、何やらかしたわけ?」
「さっきどう考えても聞く雰囲気じゃなかったわよね!?どうしてそんなに人の傷を上がろうとしてるの?」
「だってほら?今のうちに聞いておかないと二人っきりの時に何やらかすか分からないし?」
「疑問形で答えるなぁー!」
ペシペシと杖で叩かれるが力が弱いのでそこまで痛く感じていないパラドはヘラヘラと笑っている。
勇者は苦笑いで僧侶は呆れ顔、重戦士はまあそんな感じだよねみたいな納得している、どこに納得する要素があった。
「まあ、彼女を一人で街に放ったら財布をからにして帰ってくるからな。あの時は間違えて生活費が入った財布を丸々…………」
「わー!わー!その話はなし!聞かないでー!」
「ハイハイ戯れはそこまで!今日一日休むつっても日が暮れるまで時間がない。そういう話は後にしよう」
このままだと喧嘩が起きると判断した重戦士が強引に話を打ち切った。
実際、この騒動によって大きく時間を盗られたのは確かな上に全員に精神的疲労があると判断したためである。
重戦士が早く休みたいとかそういった理由ではないし、パラドがまた挑発しないようにしたという理由も付け加えておく、本人の中では。
グダグダとなってしまったが、この日はみんな宿についてそのまま爆睡した。
なにも話を聞かずに爆睡しちゃったのである。
恥ずかしい話が翌朝に先延ばしされて大変なことになる未来になるとも知らずに。
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