第2話 大統一理論によると
大統一理論によると:
1 光のエネルギーは、電子(マイナスの電気を帯びる電子)と
2 光のエネルギーは、同じように、原子核の構成要素「クォーク」のうち、マイナスの電気を帯びる「ダウンクォーク」(正の「ダウンクォーク」、ダウンクォークの場合、マイナスの電気を帯びるほうが「正」です)とプラスの電気を帯びる「ダウンクォーク」(「反ダウンクォーク」)を対で生み出すことがある;
3 「2」でできたうちの「反ダウンクォーク」と陽電子が結びついて、もう一種類の原子核の構成要素「アップクォーク」二つを生み出すことがある;
4 「3」でできたアップクォーク二つと、「2」でできたダウンクォーク(正のダウンクォーク)が結びつくと「
5 その陽子(水素の原子核)のまわりを「1」でできた電子が回り始めると水素になる。
※ なお、「大統一理論」に「大統一」という名がついているのにはそれなりの理由があるのですが、「何と何との統一で、そのどこが「大」なのか?」などということについての説明はここでは省略します。
水素ができると、星の中の核融合反応によって、ヘリウム、炭素、酸素、窒素、鉄などの元素が次々に合成されていきます。星が崩壊するときに起こる超新星爆発ではさらに多様な元素が生み出されますから「物質全部」が最終的に合成されることになります。
まさに、「真空の異なったあり方」(「真空異相」)から「物質全部」ができるのです。
ところが、この大統一理論はまだ実験的に証明されていません。
「1」「2」「3」「4」「5」のうち、「1」、「2」、「4」、「5」は起こりうることがはっきりしているのだけれど、「3」が起こることが証明されていない。
この「3」が起こるならば、「3」の逆の現象も起こるはずで、そうなると、水素の原子核である
でも、陽子という粒子は、水素を始め、すべての元素の原子核に入っています。単純化して言えば、すべての元素の原子核は、水素の原子核が核融合反応で融合してできたものですから、当然、そのすべての原子核に陽子は入っているわけです。
そういう原子核が、宇宙ができてから100億年以上も存在しつづけているということは?
「陽子の崩壊」が起こるにしても、それはとてもまれにしか起こらないに違いない。
だとすると、「陽子の崩壊」が起こることを実験で実証するためにはどうするか?
ここで「そんなのは不可能」と考えないのが「実験のひと」です。
「とてもまれにしか起こらないのなら、水素の原子核をいっぱい集めて、その「いっぱい」のなかの一個でも崩壊するところを観測できればいいのではないか?」
そう考える。
水素の原子核だけをいっぱい集めるのはたいへんですが、水素は水の構成要素ですから、水をいっぱい溜めておけばいい。もっとも、水以外のものが混じっていると実験結果を検証できなくなるので、徹底して「水だけ」、何も溶けていない水だけを大量に集める、というのは苦労だったのですが。
やってみました!
でっかい円筒形の水槽に、純粋な水を大量に溜めて、超高感度のセンサーをいっぱい取りつけて、そのうち一つの「水素の原子核」が崩壊するのを延々と待ち続ける、という実験を。
……見つかりませんでした!
水素の原子核、つまり陽子の崩壊は一回も観測されなかったのです。
ところが、一九八七年、賢治の作品にも登場する大マゼラン雲で超新星爆発が起こりました。この超新星爆発で放出されたニュートリノという粒子がこの観測装置に飛び込みまして、それが観測されました。この「超新星ニュートリノ」の観測が、のちに、この実験を主導していた
これがカミオカンデ実験と呼ばれるもので、現在も観測装置スーパーカミオカンデを使って続けられています。
スーパーカミオカンデは感度を上げ、そのニュートリノという粒子の研究に大きな成果をあげており、この研究グループにいた
しかし、それでも、陽子崩壊現象はいまだに発見されていません。「3」の証明がまだできていないのですね。
したがって、「物質全部を電子に帰し」とは、いまのところは言えないのですが。
ちなみに、このうち「1」の過程は、「真空」のなかにエネルギーが存在すると、そのエネルギーは、光エネルギーとして現れたり、それが電子と陽電子(マイナスの電気を帯びる電子とプラスの電気を帯びる電子)の
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