「いまとすこしもかわらない」 宮沢賢治の「五輪峠」と大統一理論

清瀬 六朗

第1話 詩「五輪峠」

 宮沢賢治に「五輪ごりんとうげ」という詩があります。

 七十行を超える長い詩です。

 賢治が暮らていた花巻市の東の山地に輪峠という峠があります。賢治が春まだ浅い時期の五輪峠を訪ねたときの印象(「心象」)をもとにした詩です。

 その詩に、こんな一節があります。



 このわけ方はいいんだな

 物質全部を電子に帰し

 電子を真空異相といえば

 いまとすこしもかわらない



 ※ 新字新かなに改めました。原文の全文は:

https://ihatov.cc/haru_2/082_d.htm


 この詩を読んで私がびっくりするのは、「物質全部を電子に帰し、電子を真空異相といえば」というところです。

 まさに「いまとすこしもかわらない」。

 ……いや。少しは変わりますけどね。


 でも、「真空にエネルギーが存在し、そのエネルギーが光という形態を取ったばあい、その光からプラスの電気を帯びる電子(陽電子)とマイナスの電気を帯びる電子がペア(つい)として生まれ、それがさらに変異して現在の世界の「物質全部」ができている」と言えば、「いまとすこしもかわらない」。

 その「いま」というのは、「いま」の理論である「大統一理論(GUT)」が説明するこの世の成り立ちです。

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