第18話 新しい友達

 私は、今日は、宿屋を引き払うことにした。店の2階で、寝泊りが出来る部屋があるからだ。


 「今日まで、お世話になりました。鍵を吊っておきますね」


 「いってらっしゃい。また、来てくださいね」


 「はい、何時か、食事に来ますね」


 「はい、お待ちしております」


 宿屋を出て、すぐに、店に行った。今回は、歩いて行った。店では、ドアノブの「営業中」を「休業中」に変えてから、無人販売用の機械の中の商品を確認し、売れた商品の補充をした。


 それから、私は、冒険者ギルドに向かった。中に入ると、受付のローララが、依頼用のボードに依頼書を張りながら、冒険者の対応する準備をしていた。


 「ローララ、来たよ、お早う」

 

 「お早う。今日は、早いのね」


 「昨日、狩った分を買い取って」


 「このトレーに入れてね」


 「はい、お願いします」


 私は、ゴブリン(50匹)、ゴブ・ゴブリン(20匹)、ホブゴブリン(20匹)分の証拠品をアイテムボックスから取り出して、トレーに入れた。アイテムボックス2個分だ。


 「随分、多いのね」


 「ええ、頑張ったから」


 「ゴブリンが1匹銀貨50枚、ゴブ・ゴブリンが1匹金貨1枚、ホブゴブリンが1匹金貨1枚になるよ。合計で、金貨65枚ね」


 私は、ローララに冒険者IDを渡した。


 「これに、記録してください」


 「はい、いいわよ」


 「ありがとう。また、来ます」


 私は、今後の事も考えて、一度、装備を一新することにした。そこで、街の鍛冶屋に行き、冒険者の装備として、恥ずかしくないもの買い換えようと思った。


 「すみません。装備を見たいのですが」


 「はい、好きに見て行って」


 「剣は、ここにある物だけ出すか?」


 「そうね、少し古い物なら、こっちにあるわ。でも、錆びだらけで、使い物にならないよ。

 それに、研ぎ師に出すより、新しい物を買う方が安いよ」


 「分かりました。取り敢えず、見せてください」


 私は、すぐに、スキル鑑定を使った。なるほど、ほとんどがガラクタだ。でも、1本だけ、闇魔法で、封印された剣があった。


 これは、賢者サビオに聞いたことがあった特別な剣の「魔導剣」だと思った。違っていたら嫌なので、普通の剣も1本買うことにした。それから、盾だ。


 「すみません。この2本、買いたいのですが、預かっておいてください」


 「はい、いいわよ。次は、何を見るの。盾を見せてください。それから、さっきのような古い盾も見せてください」


 「それじゃ、古い盾から、見せるね。こっちよ」


 ローララは、店の裏口近くの樽の前に、私を連れて行った。


 「ここよ。場所をとるので、裏口の外にも、置いているわ。そうそう、古い鎧も、一緒にあるよ」


 「すみません。先に、裏口の外を見ます」


 私は、裏口の外に出て行った。先ほどと同じ様に、スキル鑑定で、調べてみた。すると、闇魔法で、封印された盾と鎧一式が見つかった。


 私は、それらを持って、店の中に戻った。更に、店の中の樽の中の盾も、スキル鑑定で、調べてみたが、ここには、それらしきものはなかった。


 「すみません。これらも、預かってください」


 「あら、一杯持って来たわね。預かっておくね」


 「普通の盾と鎧一式を見たいのですが」


 「それは、向こうの棚に置いてある物ですべてよ。ゆっくり、選んでね」


 「これにします」


 最後に、私は、普通の盾と鎧一式を選んだ。それらも、ローララに預けた。

 

 「ここには、アイテムボックスは置いていませんか?」


 「ここには、ないよ。隣の道具屋に置いてるよ」


 「それでは、清算してください」


 「全部一括でいいの? 結構な金額だよ。大丈夫?」


 「はい、多分、大丈夫です。いくらですか?」


 「ちょっと待ってね。全部で、金貨45枚と銀貨80枚になるよ」


 「分かりました。これで、お願いします」


 私は、冒険者IDをローララに渡した。


 「それじゃ、お負けして、金貨45枚でいいよ」


 「ありがとう。また、来ます」


 「バイバイ」


 私は、店を出て、隣の道具屋に入った。


 「すみません」


 「はい、何か用ですか?」


 「アイテムボックスを見たいのですが。いいですか?」


 「アイテムボックスね。色々あるけど、どの程度の予算なの?」


 「金額がよく分からないです。一通り見せて貰えますか」


 「いいよ。好きなだけ、見て行って。こっちの棚に置いてあるよ」


 私は、言われた棚に置いてあるアイテムボックスを見た。スキル鑑定で、調べてみた。

 

 「すみません。もっと、上等な物って、ありませんか?」


 「えっ、普通の冒険者は、その棚の物で、十分だよ。アイテム100個は入るよ」


 「知っています。それなら、私も持っています。ほら」


 「あら、持っているのね。それに、何個ぶら下げてるのよ。

 子供がそんなに持って、何に使うの?」


 「これでも、ちゃんとした冒険者ですから」


 「そうか、失敗。子供だと思って、その棚を教えたんだ」


 「それでは、奥に行こうか」


 「はい、お願いします」


 私は、店員について、店の奥の部屋に行った。


 「ここは、VIP用の部屋なんだ。普通の客には教えないよ。だから、あなたも内緒にしてね」


 「はい、わかりました」


 この店との出会いが、今後の私の人生に大きな影響を与えるとは、この時は、分からなかった。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る