第17話 レンタルの延長

 私が、店を開店して、もうすでに、1ケ月が過ぎようとしていた。


 店の開店と閉店は、もう、ルーチンワークになっている。なんとかして、もっと、楽になりたいが、良い方法が見つからない。でも、賢者サビオには、頼れない。前回、怒られたからだ。


 「リンダ姉、暇?」


 「どうしたの、朝から、気怠そうね」


 「うん、何だか、やる気がないのね」


 「気分転換をしたら?」


 「リンダ姉も、そう思うよね」


 リンダは、元気そうだ。ふさふさの尻尾をゆっくりと振っている。


 「そうね。そう思うわ」


 「どこかへ、遊びに行こう」


 「えっ、今、仕事中よ」


 「今日1日、休んでよ」


 「そうも、行かないわ」  


 「リンダ姉の意地悪」


 「今度、一緒に遊びに行くから、今日は我慢してよ」


 「はい、分かった。約束よ。いい」


 「はい、はい、約束よ。今度、一緒に遊びに行くからね」


 「バイバイ。今度ね」


 商業ギルドを出た私達は、今度は、冒険者ギルドに向かった。


 「ローララ、暇?」


 「朝から、どうしたの?」


 「何だか、元気がないの」


 「何か、あったの?」


 「うーん、わかんない」


 「仕事のし過ぎじゃない」


 「そうかも。ローララは、気分転換には、どんなことしているの?」


 「そうね。休みの日に買い物とか、何か、甘い物を食べるとか、かなぁ」


 「買い物と甘い物か。どっちもいいね」


 「そうそう、今日は、買い取る物はないの?」


 「あっ、忘れていた。少しあるの。お願いします」


 「これに、入れてね」


 「はい。今日は、これだけです」


 「ゴブ・ゴブリンが8匹、ホブゴブリンが8匹、ゴブリンが136匹ね」


 私は、ローララに冒険者IDを渡して、記録してもらった。


 「バイバイ。また、来るね」


 今日は、気分が乗らずにダラダラしていたので、大事な用事を忘れていた。


 商業ギルドで、店と無人販売用の機械のレンタルの延長を申し込む予定だった。


 すっかり、忘れていた。もう一度、私達は、商業ギルドに戻った。


 「リンダ姉、また、来たよ」


 「もう、今日は、だめって言ったよね」


 「うん、知っているよ」


 「だったれ、何故、来たのよ」


 「あの、店を延長して借りたいんだけど」


 「何だ、用事があったのね。ごめんなさいね。誤解して」


 「いいんだ。今日は、変だったから、迷惑かけたね」


 「いいのよ。それじゃ、無人販売用の機械のレンタルも延長するの?」


 「うん、そうしてね。すべて、6ケ月延長します」


 「そうすると、全部で、金貨360枚になるよ。大丈夫?」


 「最近、儲かったから、大丈夫だよ。商業IDで清算してね」


 「でも、凄いね。店は、繁盛しているの」


 「うーん。よく、わかんない」


 「店で働いているのよね」


 「いつも、留守にしているよ」


 「それじゃ、無人販売用の機械の売り上げが凄いの?」


 「まだ、機械から、金貨を回収していないから、わかんない」


 「えっ、そんな状態で、よく、店をやっているね。本当に、大丈夫?」

 

 「今日帰って、計算してみます。儲かっているかどうか、今度、話すね」


 「それより、帰って、寝る方がいいと思うよ」


 「はい。バイバイ」


 私は、リンダの忠告通り、帰って寝ることにした。


 夢の中で、賢者サビオに注意された。


 「ちょっとは、自分で考えろ」


 「でも、もう少し、教えて貰ってもいいのでは?」


 「自分で、『賢者の道』を歩むと決めたのじゃないか」


 「そうです。でも、もっと、丁寧に導いてくださいよ」


 「何を甘えている。お前は、少しも成長しないな」


 「えぇっ、それを言いますか? 成長しないって」


 「その通りだろう」


 「でも、私はゴーレムですよ。どうやって、成長したらいいんですか?」


 「また、頼ろうとする。自分で考えるのじゃ」


 また、怒られた。ビックリして、目が覚めてしまった。


 「そうか、成長していないか」


 確かに、私は、成長していなかった。そんなことも気がつかなかった。だから、怒られても仕方がない。


 「まあ、明日から頑張ろうっと」


 すぐに、私は、また、眠りに落ちてしまった。今度は、変な夢で起こされないように。

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