第3-4話 土人形《ゴーレム》の旅立

 レベル上げのために、地下牢から旅立つことを決意した私は、親指ほどの小さな土人形ゴーレムの状態で、外界の調査に出かけた。


 廊下は光が入らず、真っ暗で、そのままでは、進み辛いので、光球ライト・ボールを作り、あたりを照らしてみた。すると、廊下は草木で覆われ、容易には進めないようだ。


 しかも、あちらこちらにスライムが蠢いていた。まずは、進みやすいようにするために、ウィンドカッターで草木を刈ることにした。


 廊下の突き当りの壁が見えるまで、繰り返しウィンドカッターを草木にぶつけた。ある程度、草木をなぎ倒すことができたので、廊下の床が見える様になった。


 床に積み上げられた草木の合間から、スライムが覗いていた。それも、1匹や2匹ではなかった。そこで、積み上がった草木の処理と合わせて、スライムを一掃するために、何度も火球ファイア・ボールを放った。


 火球ファイア・ボールに費やされるマナの量は多く、気が付くとMPが半分ほどになってしまった。少し休むことにした。他の魔物に遭遇すると困るので、用心のため、MPが満タンになるまで、待ち続けた。


 弱小のスライムでもかなりの数を倒したので、LV5になった。また、MPの総量も200まで、上がった。更に、火魔法(LV5)、風魔法(LV4)となった。


 魔法を使うたびにMPは増加していった。そして、魔物を倒すたびにLVは上昇するようだ。


 MPが元に戻ったので、ダンジョンの中を先に進むことにした。


 通路の突き当りまで来ると階段があった。そこを上がると、広々とした草原が現れた。


 色々な草が生えているようだ。何の草かわからないけれども、少し引き抜いてすり潰してみた。汁が手のひらに染み込んでくる。


 突然、頭の中で、


「スキル 採取LV1を習得しました」


「スキル 鑑定LV1を習得しました」『この草は………です。』


 と誰かの声が聞こえた。


 何か作業をする度にスキルを身に着けることが出来るようだ。


 そこで、身の周りの草を引き抜いてはすり潰していった。


「スキル 採取LV2を習得しました」


「スキル 鑑定LV2を習得しました」『この草は………です。』


 ・・・


「スキル 採取LV5を習得しました」


「スキル 鑑定LV5を習得しました」『この草は………です。』


 意外と簡単にレベルアップすることが出来た。しかし、全体のLVやHP・MPは変化しないようだ。


 この草原には角ウサギがいた。スライムと違って攻撃してくる。ウィンドカッターで、近くの角ウサギを倒した。


 すると、倒した角ウサギから輝く小さな石が飛び出してきた。どうも、魔石のようだ。


 拾い集めた魔石を体にくっつけてみた。すると、魔石は吸収することが出来て、MPが一気に増えた。


【ステータス】

 種族:土人形ゴーレム

 職業:無職

 LV(レベル):7

 HP(最大体力量):200

 MP(最大魔力量):500

 魔法:土魔法(LV3)、火魔法(LV3)、水魔法(LV3)、風魔法(LV5)、

    光魔法(LV3)、陰魔法(LV3)

 スキル:採取(LV5)、鑑定(LV5)、思念伝達(LV1)


 角ウサギを倒しながら、草原の端を目指して進んで行った。漸く壁まで到達したが、草に邪魔されて周りがよく分からない。身体が小さすぎるようだ。


 草の上に頭が出る様に身体を作り替えることにした。高さ50cmほどの土人形ゴーレムを作り、魔法陣を描いた。私はヤドカリの様に新しい身体に移り変わった。新しい身体に慣れるために、角ウサギを倒しながら、草原の反対の端を目指した。また、途中の草も抜き取り、すり潰していった。抜き取る量や、すり潰す量が増えた為か、採取と鑑定のスキルが一気に上がった。また、角ウサギの魔石を吸収していったので、HP・MPも上がった。


 ついに、HP(300)、MP(1000)、採取(LV10)、鑑定(LV10)に達した。


 急に矢が飛んできた。何とか避けることが出来たが、続いて何本も飛んできた。


 よく見るとゴブリンの群れのようだ。その中の一匹が矢を放っている。ゴブリンは、武器も使うようだ。よく見ると、剣も持っている。


「スキル 探索LV1を習得しました」


「スキル 回避LV1を習得しました」


 私は少ししゃがんで、草の中に身を隠しながらゴブリンに近づいた。後ろから頭を叩いた。


「ボコッ」


「あいた、た、た」


 もう一度、


「ボコッ」


 ゴブリンが倒れたので、上に乗って何度も殴った。気絶したようなので、ゴブリンが持っていた弓と矢を取り上げ、矢を胸に突き立てた。血しぶきと共にゴブリンは息絶えた。


 少し大きな魔石が出てきたので、それを吸収した。


「スキル 格闘LV1を習得しました」


 取り上げた弓を使って、近くのゴブリンを倒した。


「スキル 弓LV1を習得しました」


 倒したゴブリンの近くに行き、魔石を吸収した。何度も繰り返し、とうとうゴブリンを10匹倒した。


【ステータス】

 種族:土人形ゴーレム

 職業:無職

 LV(レベル):10

 HP(最大体力量):400

 MP(最大魔力量):1000

 魔法:土魔法(LV5)、火魔法(LV3)、水魔法(LV3)、風魔法(LV5)、

    光魔法(LV3)、陰魔法(LV3)

 スキル:採取(LV5)、鑑定(LV5)、思念伝達(LV2)、探索(LV3)、回避(LV5)、格闘(LV5)、弓(LV5)


 周りを見渡すと、右前方に洞窟が見つかった。


「次の階への階段が見つかるかも・・・」


 何が飛び出すか分からないので、用心しながら洞窟に近づいた。


「グァーッ」


と威嚇するような鳴き声が洞窟の中から響いてきた。


 先ほど倒したゴブリンとは少し違うような気配を感じながら、洞窟の中を覗った。

少し大きなゴブリンが他のゴブリンに何やら指示を出しているようだ。


 探索すると、


【探索】

 チャンピオンゴブリン 1匹

 ホブゴブリン 23匹


 思ったよりも数が多い。今の私は一度に3匹ぐらいしか倒せない。そして、チャンピオンゴブリンは、未知数だ。


「倒されてしまうかもしれないわ? 

 倒されたら、どうなるの? 

 また、魂だけになるのかな? 

 それとも、…」


 今のままでは、到底勝ち目はないと思い、賢者サビオに相談することにした。


 地下牢の前まで戻って来た私は、とりあえず石礫サンド・ボールで、壁に描かれた魔法陣をすべて破壊した。すると、土壁のあった面は、黒い金属がむき出しとなった。


「賢者サビオ、私です」


 黒い金属の壁を叩きながら、声にならない思いを伝えようとした。


「モドッテクルノガ、ハヤスギルナ?」


 賢者サビオの声が、頭の中で響いた。どうも、思念伝達ができるようだ。


「スキル 思念伝達LV1を習得しました」


 そこで私はこれまでの報告をし、疑問に思っていることを聞いてみた。


 すると、


 ・魂を封印した状態で、他者に魔法陣を破壊されると、魂は蒸発してしまう。


 ・光魔法で、バリアを作れば、自分を守ることができる。光魔法LV5でホブゴブリンの攻撃は防げる。


 ・バリアは持続的にMPを消費する。MPが50を割るとバリアは消滅する。


 ・MPの自動回復では、バリアを維持することは現在のLVでは難しい。


 ・HPやMPを回復するポーションを使えば、対応ができる。


 ・青いポーションを1回使うことで、MPを100回復できる。ただし、同じ効果を得るためには60秒待たなければならない。これは光魔法で作ることが出来る。


 ・赤いポーションを1回使うことで、HPを100回復できる。ただし、同じ効果を得るためには60秒待たなければならない。これは光魔法で作ることが出来る。


 ・アイテムボックス(木製)でアイテムを24個収納できる。これは闇魔法で作ることが出来る。


 ・闇魔法LV5で時空転移魔法を使うことができる。ただし、魔力量に応じて移動できる距離が決まっている。


 まず、ポーションを入れるためのガラス瓶を20個作ることにした。


 土魔法で、細かな砂をバケツ1杯程度作成し、それを用いてガラス瓶を20個作った。


 1つ上の階で、ポーション作成に必要な草を集め、地下牢の前に積み上げた。


 まず、赤のポーションを作成し、ガラス瓶に収めた。これを10回繰り返した。


 同じように青のポーションを10個作った。


 次に廊下に落ちている木材を用いて、アイテムボックスを1個作った。それに、先ほどの20個のポーションを入れた。


【ステータス】

 種族:土人形ゴーレム

 職業:無職

 LV(レベル):15

 HP(最大体力量):600

 MP(最大魔力量):1500

 魔法:土魔法(LV7)、火魔法(LV3)、水魔法(LV3)、風魔法(LV7)、

    光魔法(LV5)、陰魔法(LV5)

 スキル:採取(LV7)、鑑定(LV7)、思念伝達(LV2)、探索(LV5)、回避(LV5)、

     格闘(LV6)、弓(LV6)


 次に半径1mのバリアを作り、維持させる練習をした。


 最初にバリアを作る時にMP500を消費し、1分間維持するのに、更にMP500を使った。


 これでは全く役に立たない。繰り返し練習して、消費するMPを減らす必要がある。少なくとも1分間で、MP100程度の減りにならないとだめだ。


 休んでMPを回復しながら、何度も、何度も、バリアを作り、維持する練習をした。


 1週間たった時に、光魔法LV10までになり、目標とした1分間でMP100の減り迄になった。


 MP(最大魔力量)も2000になった。これで、10分は余裕で戦える。


 いよいよ洞窟へ突入だ。


 まず、洞窟の前に立っている見張りのホブゴブリン2匹を弓で倒した。


 洞窟の中に入る前に探索で、様子を調べた。


 チャンピオンゴブリンは、洞窟の一番奥にいる。そこまではおよそ200mある。


 その周りに、ホブゴブリン5匹が控えている。


 その他のホブゴブリンは、4・5匹ずつ固まっていた。ホブゴブリンは、全部で30匹になっていた。


 40~50mごとにホブゴブリンが4・5匹いることになる。


 今の私は、弓で50m先のホブゴブリンを倒すことができるので、小走りで移動しながら、見つけたホブゴブリンを弓で倒していった。


 ついに、洞窟の一番奥のチャンピオンゴブリンの前まで到達した。ここまでに、5分を使った。MPは500消費したが、その都度青のポーションを飲んだので、まだ、MPは1500残っている。


 弓で、ホブゴブリンを2匹倒した。3匹のホブゴブリンとチャンピオンゴブリンが、私を目指して襲ってくる。再度弓を使い2匹のホブゴブリンを倒した。


 土魔法で、ホブゴブリンとチャンピオンゴブリンの間に1mほどの土壁を作った。チャンピオンゴブリンが土壁を潰す僅かな時間で、最後のホブゴブリンを弓で倒した。


 残るはチャンピオンゴブリンだけだ。


 チャンピオンゴブリンの前に土魔法で穴を作り、体制を崩させた。すかさず、弓を3本放った。2本は、剣で防がれたが、1本は右腕に命中した。


 次に、光魔法で光球ライト・ボールをチャンピオンゴブリンの目の前に作り、暫く周りが見えなくした。


 土魔法で石礫サンド・ボールを右足に集中させた。チャンピオンゴブリンの右足から緑色の液体がドロリと流れ落ちる。


「グァーッ」


 チャンピオンゴブリンの咆哮が洞穴の中で響き渡る。再度、光魔法で光球ライト・ボールをチャンピオンゴブリンの目の前に作ったが、目を閉じられて、効果はなかった。


 そこで、水魔法で、チャンピオンゴブリンの足元をぬかるみに変えて、動きを止めた。チャンピオンゴブリンは、膝の少し下まで、泥の中に埋まり、うまく動けないようだ。


 更に水魔法で、チャンピオンゴブリンと私までの間をすべて泥に変えた。チャンピオンゴブリンに攻撃されるまでの時間を稼いだ私は、弓での攻撃・石礫サンド・ボール火球ファイア・ボールを交互に繰り出し、攻撃を継続した。


 攻撃しながら、1分ごとにポーションを飲み、MPを回復させていった。


 MPが残り200となったとき、ようやくチャンピオンゴブリンは、前のめりに倒れ、拳大の魔石が飛び出した。


 魔石を吸収した後、私は大の字になって寝転んで、HPとMPの回復を図った。


【ステータス】

 種族:土人形ゴーレム

 職業:無職

 LV(レベル):20

 HP(最大体力量):800

 MP(最大魔力量):1500

 魔法:土魔法(LV10)、火魔法(LV7)、水魔法(LV5)、風魔法(LV7)、

    光魔法(LV6)、陰魔法(LV5)

 スキル:採取(LV10)、鑑定(LV10)、思念伝達(LV4)、探索(LV7)、、回避(LV7)、

     格闘(LV6)、弓(LV10)

 称号:小鬼英雄殺し

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