第5話 冒険者としてスタート
洞窟の奥に上への階段があることを確認して、一度賢者サビオの居る地下牢へ戻った。思念伝達で状況を報告した私は、簡単に地下牢前まで戻れるように、転移の魔法陣の描き方を賢者サビオに教えてもらった。
これで、僅かなMP消費で、ここまで戻ってくることができる。
土魔法もLV10となったので、アイテムボックスを硬化した石製に替えることにした。これにより、アイテムが100個収納できるようになった。
草原で薬草を採取して、MP回復用の青のポーションを80本作り、HP回復用の赤のポーションを10本作った。HP回復用のポーションは、前回の残りと合わせて20本になった。
賢者サビオに別れを告げて、洞窟の奥の階段を上ることにした。
上った先も洞窟だったが、通路は50m程度で、その先には草原が広がっていた。そして、初めて空を見ることが出来た。
本当の意味での外界に出ることが出来た。
今の
これで、一見冒険者風になったはず?
草原を暫く歩くと、小さな村に行きついた。
子供が4人で走り回っていた。
私は、右手を挙げて挨拶をした。
「だれ?」
一人の女の子が声を出した。
「誰だ!」
少し大きな男の子が声を出した。
子供たちの声は、頭の中で響いている。発生された声は思念伝達と同じ様に働くようだ。
でも、私が思念伝達を使うのは、少しまずいかな?
そこで、私は小さな頭だけの土人形を精巧に作ることにした。その頭だけの土人形には、耳・口・目を付けた。
もちろん、口の中には舌を、喉には声帯を付けた。
そして、腹話術を使って話すように、頭だけの土人形を使って、子供たちに話しかけた。
「こんにちは。私は旅の冒険者です。でも、駆け出しなので、今どこにいるのかもよく分からないので、教えてくれませんか?」
「冒険者? でも、小さいね」
「ドワーフなの?」
「どこから来たの?」
矢継ぎ早に聞かれた。
「身体は小さいけど、ドワーフじゃないよ。
転移魔法で、この先の洞窟に強制的に移動されたんだ。
そのせいで、今の場所もわからないんだ」
「えぇっ。そんなに小さいのに! それなら、子供なの?」
「そう。大変だね」
「ここは、ノースホットランドのビュワーセ村だよ」
「冒険者なら、冒険者ギルドへ先に行きなよ」
子供たちが口々に答えてくれた。
私は、できるだけの情報を集めるために、冒険者ギルドに行くことにした。一番大きな男の子が案内してくれるようだ。村の中央付近に、その冒険者ギルドはあった。
ビュワーセ村は、名前こそ村だがかなり大きな集落で、宿屋や飲み屋なども一そろいあるようだ。
「ここだよ。付いて来て」
「お姉さん。この人、冒険者なんだ。話を聞いてあげて」
「えぇっ。坊や一人じゃないの?」
「僕の右にいるよ。小さいから見えないのかな?」
私は、身長50cmで、受付台からは見えないようだ。受付の女の人が台から覗き込んできた。
私は、上を見上げながら、受付の女の人と顔を会わせた。といっても、全身兜で覆っているので、ゴーレムの私の顔は見せていないのだが。
「こんにちは。私は、冒険者です」
「この人、他の土地から飛ばされて来て、この辺りの様子が分からないって。
教えてあげて」
「すみません。よろしくお願いします」
「えぇっ。あなた、子供じゃないの?」
「違いますよ。これでも、ちゃんとした、大人ですよ」
「それでは、先に少し質問させてくださいね。
冒険者IDを見せてください」
「すみません。まだ、冒険者登録をしていないのです」
「それでは、まず、冒険者登録をしますが、いいですか? 料金は、金貨20枚です。先に収めてください」
「お金がいるのですか?
私、お金を持っていません。何か仕事を貰えませんか?」
「掲示板の仕事は、冒険者登録をしていないと依頼できないので、常時発注しているものになります。
よろしいですか?」
「はい、それで結構です。よろしくお願いします」
受付の女の人から、誰でもできる仕事を教えてもらった。今の私にできるのは、一人で、あまり他の人と接することのない、薬草集めのようだ。ポーションを作る時に集めた薬草と同じなので、すぐに取り掛かることにした。
私は、案内してくれた男の子にお礼を言ってから、冒険者ギルドの裏に回った。辺りに人が居ないのを確かめながら、転移魔法で戻ってくる為の魔法陣を地面に描いた。それから、もう一度周りに人が居ないのを確認してから、地下牢の前に転移した。
賢者サビオに、これまでのことを報告してから、一つ上の草原で、必要な薬草を集めた。ついでに、アイテムボックスをもう一つ作り、その中に薬草を詰め込んだ。薬草は、10本で一束にして入れておいた。これで、一束で1アイテムになる。100束集めて、冒険者ギルドの裏手に転移魔法で移動した。
「ドン。ドン。ドン」
私は、冒険者ギルドの受け付け台を軽く叩いて、受付の女の人に覗いてもらった。
「すみません。薬草を集めてきました」
「早かったね。向こうに踏み台があるから、それを使って貰える?
そのままでは、作業がし難いので」
私は、言われた通りに踏み台を持ってきて、その上に乗った。
「これで、いいですか?」
「はい。それでは、薬草を出してください」
私は、集めてきた薬草をとりあえず、10束出した。
「はい。これです」
「一束、銀貨5枚になります。10束なので、銀貨50枚です」
銀貨100枚で、金貨1枚なので、冒険者登録には全く足りない。
「まだあります」
仕方ないので、残りの90束も買ってもらうことにした。これでやっと、金貨5枚だ。このまま繰り返してもいいのだが、時間がかかるので、手持ちの他の物を売ることにした。
「すみません。ポーションもあるのですが、買って貰えませんか?」
「一定のレベル以上であれば、買い取ることができます。
とりあえず、見せてもらえますか?」
「これです」
私は、青のポーションを1本出した。
「少し、お待ちください。鑑定します」
受付の女の人は、何やら鑑定用のボードを台の下から出してきた。
私が出したポーションを上に載せると、ボードについている10個のランプのうち3個が点灯した。
「初級ポーションとして買い上げることができます。1本銀貨25枚になります」
「わかりました。よろしくお願いします」
私は、アイテムボックスからMP回復用の青のポーションを59本出し、合計60本を買ってもらった。
これで、金貨20枚になった。
これで、冒険者登録をしてもらえる事になった。私は、金貨20枚を出して、登録用紙に名前と職業を書いた。とりあえず、職業は弓戦士とした。
これで、最低ランクの冒険者としてスタートできる。今は、Gランクだが、少しずつ上げていって、有益な情報を得ようと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます