第7話

 今は言い合いが終わって、寝に入ったところ。


 横にはすやすやと気持ち良さそうに寝ているユイ。今度はガチで寝ているとは思う。


 寝れん。どうしてこうなった? いや、言い負かされて、良い様に丸め込まれて、こうなったんだ。


 ユイも年相応な身体付きなってきていて、チラッと顔を見る度に心臓の鼓動が早くなってしまう。


 ここは、羊でも数えて気を紛らわせよう。


 羊が一匹、羊が二匹、羊が三匹、羊が四匹、と順調に数えていく。


 羊が三十、羊が四十、あ、睫毛長いな、じゃなくて!!!


 不意にユイを見てしまい、煩悩が頭の中を巡る。


 ああああああああああああああああぁぁぁ!!!!!!!


 自分への戒めを込めて、腕を抓る。


 これじゃあ、いつになっても寝れない。あーでも、見る度に可愛いと思ってしまう。


 小さい顔で綺麗な顔立ちをしてて、一際目を引く小さくてもふっくらとした唇に目が行ってしまう。


 直ぐに身体ごと反対側に向ける。


 あぶねえ、キスしそうになった。


「シュウちゃん……」

「!?」


 起きてたのかとビックリしたが、寝息が聞こえてくるのでそっと胸を下ろす。


「ばーか」

「やっぱ、起きてるだろ」


 そう言うが、ユイは何も答えない。暫く見つめたが、寝息しか聞こえない。


 やっぱ、寝てるのか。


「はあ」


 何か、アホらしい事に悩んでた気がする。もういい、寝よう。


 瞼を閉じると、そのまま寝てしまった。


◆◇◆◇


 チリリーンチリリーンチリリーン。


 目覚ましの音が聞こえて、スマホを探す。


 何処に置いたっけ。確か、この辺に。あ、あったあった。


 スマホだと思って掴むが、柔らかい。手に収まるけど、少し物足りないぐらいの大きさだ。ふむ、Bか。Cはないな。


「!?」


 俺はそこで眠っていた脳が起きて、自分が触っているものに気づく。ばっと起き上がって、横を見る、


 すると、胸元を押さえてこっちを涙目で睨むユイが居た。


「昨日はしないって、言ったのに」

「ごめん!!!! 本当にごめんなさい!!!!」


 俺は直ぐに土下座をして、謝る。


「キスしてくれたら許す」

「えっ、あ、はい」


 そう言うと少し驚いていたが、直ぐに目を瞑って口元を前に突き出してくる。


「いや、そっちはしない」

「じゃあ、許さない。お義母さんに言いつける」

「それは止めろ!!!!」


 肩を掴んで、揺らしてユイを説得する。ユイは物知らぬ顔でいる。


「頬で許して下さい」


 プライドを捨てて、もう一度土下座をする。


 暫くそのままで居ると、ユイからお許しが出た。


「いいよ、それで」

「ほんとか! じゃあ、失礼して、!?」


 頬に口を近づけて行くと、ユイが急に顔をずらして、ユイの唇と自分の唇が重なってしまった。


 ユイは離さないと言わんばかりに、顔を押さえてきて、そのまま押し倒して上に乗ってくる。


 俺は突然の事で頭がフリーズしてて抵抗も出来なかった。


 誰だよ、女の子の唇は甘いって言ったの。何の味もしないじゃん。


 体感は長く感じたユイとのキスの時間。満足したのかユイは離れていく。


「えへへ。じゃあ、下で待ってるね」


 そう言って、ユイは嬉しそうに部屋を出て行く。


 ユイが出て行くと同時に、さっきの出来事が脳内に再生され、顔が急激に熱くなってきた。


 おおおおお、おれ!?!!?何してんの!!?!!ああああああああ、あれって、俺からした事になんの!?!?だとしたら、言い訳も………。


「あ、もういいや。行こ」


 俺は考えても考えても纏まらず、最後には考えるのを止めて、部屋を出て行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る