第5話
あれから、犯人を探すも見つからず、放課後になってしまった。
「ぜっっっってえ、許さねえ」
「似合ってたんだから、良いじゃん」
そう言っておいて、思い出し笑いをする創。拳を握り鉄拳制裁を加える。
よし、煩いのも黙ったし、帰るか。
そう思って、カバンを持って教室を出ようとすると、色素の薄くピンク色が混ざった髪の女の子──ユイが来た。
「帰ろ! シュウちゃん!」
「はいはい」
ユイと一緒に教室を出ていく。教室を出ると木之下も待っていたのでそのまま三人で帰っていく。
「待て! 今日こそは俺がリベンジするからな!」
ダッシュで後ろから走ってくる創をを足を引っ掛けて転ばす木之下。創は踏ん張れず、顔面から床に激突した。
「何すんだ!!」
「走るあんたが悪い」
「はあ? どう見ても転ばしたお前が悪いだろ!」
ギャーギャー文句を言う創だが、耳を塞いでべーと舌を出している木之下。本当に仲が良い事で。
それからは、喧嘩をする二人を宥めながら、ゲームセンターに着いた。
ユイが相変わらずバカ強くて、創や俺は一回勝っては負けを繰り返している。今は創が俺の最強コンボを見せてやる!っと言って張り切っている。
俺は自販機で買ったジュースを飲んで、一息着いている。
「ねえ、ちょっといい?」
そう言って、大量のぬいぐるみを袋に入れて、持っている木之下が来た。数えるだけで、十個は軽く超えてる。
「すげえな、それ」
「取り方さえ分かれば簡単だよ。で、ちょっと」
そう言って、外の方に指を差す木之下。外で話さないといけない事なのか、それとも……いいか。木之下の荷物を少し持ってから、外に行く。
外に出て、店からは見えない位置の端まで移動する。
「で、話って?」
「えっと、その、ユイがね、クラスで浮いてると言うか、何と言うか」
浮いている? どう言う意味だろうか。あの性格だから、ある意味浮くのは当然だし、人見知りはするけど、人当たりは良いはず。
「言っとくけど、あんなユイ、宮本君と居るときだけだからね?」
「そうなのか?」
木之下に心の中を見透かされたみたいで、少しビクッとする。
でも、中学の頃は明るくて優しい学校アイドルで名が通ってたと思うんだけど。
「それでさ、私一人じゃどうこう出来ない事もあってさ」
「詳しく」
木之下から聞き捨てならない言葉が聞こえて、木之下に詰め寄る。どうこう出来ない問題? ユイが何された?あいつが人に嫌がる事はしない。だから、嫌われるはずもないって断言できる。どうせ、ユイに嫉妬したやつらから嫌がらせをされたんだろう。
「痛いから、離れて!」
「あ、すまん」
いつの間にか掴んでた肩を離す。木之下はじっとこっちを睨んで、距離を取ってくる。悪かったと謝って話を聞き始める。
「何処から話そうかな。普段のユイは知らないもんね」
「大体は想像つくよ」
「本当に? 言ってみて」
怪しむ視線を向けられてくる。俺って、そんなに信用ない? ちょっと悲しくなる。
「普段はあれだろ? 人当たりもよくて、誰にでも優しくするけど、人見知りで初対面にはどう接していいか分からなくて、家でその子の好きな物を調べてて、次の日からは自分から話しかけに行って、誰でも仲良くなっていって、人が困ってたら助けに行くし」
「もういい。大丈夫」
「そうか? まだまだあるぞ?」
満足したのかストップと手を出してくる。俺は言い足りず、何とも言えない気持ちになる。
「そんなにユイの事を見てて、何で付き合ってあげないの? 嫌いなの?」
「バカか。好きに決まってるわ。ただ、顔がいいって………。ショックなんだぞ」
「はあ。何でそこはそうなるのよ」
呆れた様に嘆息をして、ジト目で見てくる。仕方ないだろうが、あの言葉がトラウマ過ぎて、ユイから好きって言われる度に蘇ってくるんだから。
「まあこんな話はどうでもいいわ。取り敢えず、ユイを虐めたやつの名前と顔教えて」
「えっ、 何で?」
「シメる。先輩と言う特権を使ってな。ふふふっ」
止めんか! と殴られる。
頬がジンジンと痛む。殴るとは酷いやつだ。と言うか、シメて欲しいから相談してきたんじゃないのか?
「じゃあ、どうしろと?」
「宮本君、見た目に似合わず、人と関係作るの上手いじゃん? それで、一年の子達に仲良くなって、どうにかユイと仲良くしてくれないかなって」
「どうにか、って。人任せだな」
「私は人と関わるの苦手なの。宮本君は得意でしょ?」
得意って訳じゃないけど。でも、褒められてるので悪い気はしない。
「わーたよ。やってみる」
「ありがと。あ、シメるのは無しだよ?」
「それは最終手段にする」
いや、しないでよ、と怒られてしまうが、ユイに酷い事をしたんだから、報いを受けるべきだ。ユイに酷い事をしたやつらは調べ上げて必ず、報いを受けさせる。
そうと決まったら、まずは情報収集だ。一年に詳しそうなやつって誰だろう。そこら辺の繋がりは余り知らないから、取り敢えず適当に当たってみよう。
数人にLI〇Eを飛ばしておく。後で、創にも聞いておこう。
木之下との話が終わって、ユイ達の所に戻る。
ユイはこっちに気づくと嬉しそうにこっちに来た。創は灰になってて、ずっとあばばばばと泡を吹いている。
「これで、五十連勝したよ!」
「まじか。凄いな」
ぽんぽん、と頭を撫でて褒めてやる。木之下は灰になった創をケラケラ笑って罵倒している。
「シュウちゃんもやる?」
「んー、今日は帰ろ」
ちょっとしょぼくれていたが、手を握って歩いていく。すると直ぐに嬉しそうに腕に抱きついてきた。ほんと、チョロい。
店を出て行くと、うちの制服を着た人達と出会す。
「あ、相川さんじゃーん! やっぱそのモサモサ男と付き合ってんだー!」
「まじウケる! 人見る目なさすぎ!」
会って早々に高笑いをしてくる派手な見た目な三人組の女子。派手女ABCでいいか。
ユイが手に力をぎゅっと入れて震えていた。あー、こいつらね、そうそうか。
「ダメだよ。手を出したら」
心を読まれたのか、先に言われてしまう。
「あ? 何こいつら」
灰から戻ってきた創は派手女共に向かってメンチを切っている。止めんか、と木之下に叩かれている。
「いやーほんと、お似合いだわ! 性格ブスと顔ブスが付き合ってるとか!」
ピキっと額に血管が浮かぶ。
にこやかに笑って木之下に合図を送る。
やっていい?
ダメと首を横に振られてしまう。残念だが、諦めよう。
「で、お前らは何だ? ユイの友達か?」
「はあ? ワタシらがそんなのと友達とかねえーわ。調子に乗んなよ。メガネオタクが」
そう言って、顎を突き出して威嚇をしてくる派手女A。
「そうだな。じゃあ、俺より顔が悪いお前らはブス通り越して、モンスター級だな!」
「はあ?」
「だな。性格ブスって言っといて、お前ら方が口悪いし。お前ら方が性格ブス、いや、モンスター級に悪いな。木之下、今の撮ってた?」
「うん、あるよ」
そう言って、さっきの言葉を全部録画した動画を見せてくれる。さすが、木之下さん。良い仕事をしてくれる。俺はその間にユイから髪ゴムを貰って髪の毛を縛る。メガネ外すと見えないが隣りにユイが居てくれるから安心して外す。
「ちょっ!? 勝手にとんなし!」
そう言って、木之下の腕を掴む派手女B。
「はーい。今のも撮ったぞ〜。学校に送っておくなー」
「はあ? 何なのあんたら!!! ワタシらはそっちの性格ブスに用があるんだけど!!!」
「だからよお、お前らの方がブスだって言ってんだよ」
「だから、そっ、、、えっ」
俺の方を見て驚愕して、後退りをしている。
俺の親父は元モデルでいまは俳優をやっている。母さんも容姿は良い方でその遺伝子を受け継けば突然、容姿は良くなるだろう。
「なあ、この顔がブスなんだろ? これより、良い顔なんだろ? その化粧の濃い顔でこれより顔がいいんだろ?」
俺は一歩、一歩、と詰め寄っていく。こう言う時は嫌いな顔でも役に立つな。
「それで? ユイが性格ブスって何だ? 人の悪口を言うお前らの方が性格"ブス"だと思うが?」
ブスの所を強調して言ってやる。
「いや、あの」
「で?何の用だっけ? ユイと俺が付き合ってるだっけか?」
「いやその、」
さっきとは違って言葉に覇気がない。このまま畳み掛けてやろう。
「こんな可愛くて人当たりも良い子ならそう言われても大歓迎だけど、お前らみたいに性格ブスで容姿ブスは願い下げだね」
「っ! もういい! 行こ!!」
そう言って、怒りながら帰っていく三人組。
「あ、またユイを虐めたら、さっきの動画マジで流すからな」
「!!」
そう言うと、走って逃げて行ってしまった。
これで、二度とユイには手を出さないだろう。よしよし、一件落着だ。まあ、報復は後で必ずするけど。
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