第51話 ついに

 さて、これが本当に最後だね。動物の姿をしたボスとしては。

 最後に戦ったのはサル。

 サルは木の上にいてゆっくり果物を齧っていた。私達がバジリスクと戦っている間、その場所にはいたのになんの攻撃も仕掛けてこなかったのだ。


『めんどうくせーこのまま果物食い放題のがいいんだけどなあ』


と言っているのが聞こえた。

 果物食べ放題がいい、ねえ。同じ場所にいたのにバジリスクとは正反対だと思った。

 先程の私の切り替えはなんだったのかとも思わされたね。


『あなたは戦う気はないの?』


私は気になったので聞いた。

 果物を沢山食べたいというのがサルの願いなのだとしたら、もう叶っているのではないかと考えたのだ。それなのにまだいたということはまだ満ちていないものがあるのではないか、と。


『おれの声聞こえるんだな。そーだな、おれは戦う気はない。でもお前らはここを通りたいんだろ?じゃあ、おれと追いかけっこをして捕まえろよ。おれはこの木の上をいくことしかしねえからよ。簡単だろ?じゃあな!』


サルはそう言っていた。簡単とは言っていたけれど、素早く追うのには大変であった。木の上だけをいききするにしても、どこの木の上にいるのか見当をつけることが難しかったのだ。だが、ここで頼りになったのがヴォルフである。

 ヴォルフはイヌのように鼻を使って匂いを嗅いだ。あの一瞬で匂いを覚えて探すだなんて犬だったとしても難しいと思うのだがそれをやってのけた。そのおかげで木の上を移動してすぐに見えなくなってしまっていたサルが見つけやすくなった。しかし、見つけるだけではいけない。追いかけっこだと言っていたからだ。私達の誰かがサルをつかまえるまで終わらなかった。

 速くてつかまえるのが大変だったため強行手段に出た。といっても、スキルを使ったということだが。


 私の使ったスキルは自分の足を速くすることと、サルに『遅くなれ』と言っただけ。あまりスキルは使いたくなかったのだけれど、あの時は仕方なかったと言えるかな。まあ、スキルを使ったことにより少し遅くなったサルをつかまえることはできたので、結果的には良かった。


『追いかけっこ面白かったぜ!お前ら結構やるんだな‼︎もしかしたらあいつにも敵うかもしんねえな〜』


そう明るく言ってサルは消えた。あいつに敵うかもしれないという、あいつが誰なのかは分からなかったけれど察しはついた。

 そして、五階ごとにいたボスの話はこれでお終いだ。ボスはみんな十二支の動物達。それを知っているのは私がいた世界の人だけなはず。つまりはこのダンジョンを作った人物は——私は考えていたことをやめて進んだのだ。だって、やっとたどり着けたから。


それが今の私が、私達がおかれている状況。

 ここからは今のことを知ってもらおう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る