第47話 駆け抜けたい

 早速次にあったことについてだね。そうだなあ、どこからにしようか。まず天井が高いところから通常に戻ったことと、地面に草が生えていたことかな。草が生えていたからまた虫が出てくるかと思っていたけれど出てこなかった。

 ではなぜ草だったのかと分かった時のことを語らせてもらおう。それが分かったのはボスがいる場所に来た時だった。そこにいたのはとても大きな動物。このダンジョンのボス達は大きかったけれどその中でも特に大きいとほどであった。

 

 それは前足に蹄があり、広い草原、地面を駆け抜けていく。普段は温厚だから話したらどうにかならないかと試みて話してみたのだけれど余計なことだったというのが分かったのは、それの話を聞いたあとだった。

 それは……もう察しがついているかもしれないがそれとはウマのことである。馬が言ったことは『競争してみたいし人を乗せて思いっきり駆け抜けたい』だった。


 あの時は誰かを背中に乗せたいというのは私が叶えてあげられるけれど、競争したいという願いはどうしようかと困ったなあ。最終的にヴォルフが競争することになったのだが。ちなみに、これが余計なことだったと思った時ではない。問題はこのあとだったのだ。

 まあ、私が馬の速さを読み誤っていたのがいけなかったということなのだけれどね。そう、ヴォルフとウマは競争をした。そこまでの長い距離ではなく短距離だ。ウマとオオカミでは速さが違うのでヴォルフにハンデもあった。そうして始まったのだ。私はその時に後悔した。後悔したというか、何故私はあんなにもワクワクして背に乗ったのだろうと思ったのだ。そう思った理由を知ってほしい。


 あんなに速いと思っていなかった。ウマが走る姿を真剣に見たこととかなかったしどれだけ速いかとか知らなかった。だから落とされそうになって危機を感じた時が乗らなければ良かったと思った瞬間だ。結局落ちることなく無事にゴールしてくれたのは救いだった。ウマに踏まれでもしたら取り返しのつかないことになっていたからな。そんなことにならなくて良かった。ギリギリ、ニコのスキルで治せたかもしれないけれどできなかったら怖いしなあ。


 あっ、そうだった。ウマはね、達成感に満ちて消えていったよ。最後に『ありがとう』って言ってくれた。私はその一言で十分だった。自分の後悔とかとうだって良くなったのだ。ウマの願いを叶えられたならそれでいいって思えたから。


 それもまた一つの成長だったのかもしれないね。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る