第46話 空想上のもの

 ここからは一つ一つのボスについてだけを話していこうかな。階数ごとにだととても長いお話になってしまうからね。もうすでに長いとは思っているけれど。

 ということでまず一つ目……一つというのは違うか。なんと説明したらいいのだろうか。一体目、か?やはりボスを説明する時の言い方って難しい。まあ、一体目だとしておこうか。


 ビラの次のボスはとても大きかった。そして、長くもあった。下に降りた瞬間に天井が高くなっていた理由がそのボスを見て分かった。そのボスは飛んでいた。上を気持ちよさそうに、まるで泳いでいるかのように上空をたださまよっていたのだ。空という表現も微妙に違う。ダンジョン内だから外の風景は見えないし。

 おっと、話が逸れてしまった。あのボスのことを話すのだったね。

 

 えーとまずは、なんの動物だったかかな。

 上を飛んでいて長くて緑色の生物。そして私が考えていたことと合わせると……あれは竜だったと思う。本物を見たことないから正解なのかは分からないけれど。だが、飛んでいる相手にどうしようかと悩んだのは事実。


『どうするんですの?あんな、空を飛んでいて大きい敵を相手にどう戦うんですの?』


ニコがそう聞いてきた時、私が思っていたことは……


(空想上のものを見られるってテンション上がる!しかもめちゃくちゃ長くて大きいー!もふもふじゃないけどすごい‼︎乗ってみたいなあ乗れる機会とかってもうないよね⁈というか、乗ったらどんな感じなのか気になりすぎる!)


などなど間抜けなことだ。年甲斐もなくはしゃいでしまったし。初めて見るものってテンション上がるからなあ。

 それでも落ち着いて答えた。


『敵じゃないよ。それとさ、降りてくる時を狙って乗ってみようよ。私のスキルもあるし!』


 私はそう言ってみた。なるほどみたいな顔をして頷いて賛成してくれた。ワクワクしながら言ったからダメって言われたらどうしようかと思っていた。あの時は乗ってみたいという気持ちが全面に出てしまっていたからなあ。冷静にスキルを使うことはしたのだから多少ワクワクするぐらいは許してほしい。


 許されるもなにも怒られもしなかったのだけれどね。みんな優しいから怒ることないんだよね。まあ、私が危ないことしそうな時とかに心配して怒鳴ることはあったか。

 私は考えなしで動くことの方が多いので止めてくれる仲間がいるというのは心強いことだ。動物達を守るためならどんなに危険だったとしても飛び込んでいくのが私。無茶をしすぎて沢山心配させるのも悪いから少しは考えるようにしようかなあ。


 って、また話が逸れちゃったや。竜とのことまだ終わってなかったのに。

 私のスキルを使って下まで降りてきてもらって竜の背中に乗った。ゴツゴツしているかと思ったけれど、思っていたほどではなかったな。でも、もふもふのが好きだと再確認する感触ではあったよ。

 そこからの展開は……竜は暴れた。だって、私が背中に乗った状態でスキルを解いたから。突然知らないものが自分の身体の上にいるのだから驚くのも当然。それがわかっているのに、私はスキルを解いた。


 従わせるという行為が嫌だった。私欲を満たすために竜に跨った自分のことが許せなくなりそうだった。気持ちよく飛んでいたところを私のスキルで下に降ろされて意思に関係なく攻撃され、倒されて消える。

 そんな理不尽に振り回されることがあっていいのかと、ふと考えたのだ。今までだってそうしてきてしまっていたかもしれないと、そう思うと胸が締め付けられるようだった。


 この気持ちはきっと彼女と、意思を持ったボスと会話をしたからこそ生まれた。

 彼女のように誘われたもの達だったかもしれない。彼女のように何かを待ち続けているのかもしれない。

 だとするなら、自分の意思で私達に立ち向かってきてほしい。私のスキルで抵抗できないまま消えないでほしかった。

 だから、解いたのだ。

 暴れられたけれど、それは意思があって抵抗してきた証拠。その証拠がなにより嬉しかった。自分の意思を持って向かってきてくれたから。その時は少しだけビラの気持ちが分かったような気がした。


 そうして私達は暴れる竜と戦うこととなった。私はしがみついて落とされないようにするのに必死だった。ライオスから『離れろ!』という声は聞こえていたけれどそれどころではなかった。というか、離れたら離れたで上にいった時だったら危ないからね。

 がっしりとしがみついて離れない。竜が私を離そうと暴れて、疲れてくると飛行する距離や高さも下がっていった。私はそれを待っていたのだ。その時をただひたすらと待っていた。そうして最後はライオスの剣で竜を……


 最後というのは思っているよりあっけなくきてしまうものである。だが、私は竜の言葉をしっかりと聞いた。『楽しかった』そう言っていたのだ。

 今まで私は動物の声が聞こえるというのに聞こうとしていなかったのかもしれない。後悔したところで遅い。それならこれから後悔しないように、ちゃんと戦う相手の言葉を聞こう。それが私がその時に思ったことだった。

 

 と、竜とのことはここまでかな。

 ここからもまだ長いからなあ。

 なので次にいかせてもらおう。

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