第45話 進む先で

 私はあのまま寝た。

 ヴォルフを抱きしめていたらつい眠くなったのだ。疲れていたからなあ。睡眠も大事なことだし問題ない問題ない。

 数時間寝たら疲れも取れたし、目覚めスッキリ……とまではいかなかったけれどね。眠ろうと思って目を瞑ったらビラのことを思い出す。眠くなったから寝ようとしたのは本当だけれど目を瞑ると彼女の最後を思い出すから中々寝られなかった。私の脳裏にしっかりと刻まれた彼女の姿を思い出すのだ。寝られるわけがない。結局寝たのだから説得力がないね。

 きっと、もう大丈夫だ。私、切り替えは早い方だから。今だってご飯食べて元気モリモリだ。相変わらずどこからのご飯なのかも不明なものではあるが。

 食べても変なふうになったことはないから安全なものだろう。それはそれで少し怖いと感じるのだが。


「さて、ご飯を食べ終わったところで……そろそろ行こっか。次」


私はそう言って立った。

 私には一刻も早く進みたい理由があるのだ。『あの男』という者に会うため。その人がどんな想いでここを作ったのか、何故彼女を誘ったのか。それを聞いてみたい。

 これはただの私欲。それでも、それが今の私を突き動かしている。そうでなくとも、ダンジョンは攻略するまで出られなさそうだし。覚悟を決めて進んでいるのだから今更引き下がることもないけれど。


「お前もう平気なのか?」


ヴォルフに聞かれた。

 何故こうも鋭いのか……私が隠すのが下手なだけかな。


「平気だよ!それより今は早く進みたいんだ」


私は笑って言った。

 平気だと思ってもらえるように。もうすでに隠しきれていなかっただろうけれどね。


「セリナがそう言うのなら行こうか」

「そうですわね」


ライオスとニコが立って言った。

 二人は私がビラと戦っている間も他のウサギ達の対応をしてくれていた。二人も疲れていると思うのに、私が言ったからと賛同してくれたのだ。

 

 そうして私達は下へ降りていく。これからどこまで続いていくのか、どんなボスが出てくるのかは不明。いや、半分はウソ。実は察しがついているから不明なわけではない。確証がないから言うことはしないのだが。

 ただ、これまでの階にいたもの達やボスを思い返してみれば分かることだ。少し変わった動物の数々。出してくる順番。それらは、日本で過ごしていれば自ずと考えつくこと。そして、それの答え合わせは最後の場所まで行かなければできない。


 だから、まだ歩んでいく。

 苦しさも悲しさも全て私だって、受け入れるよ。彼女にもらった少しの強さも抱いて、ね。


(きっとまだまだ強くなれる!)

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