第41話 覚悟
フードを脱いだビラはとてもまっすぐな瞳をしている。その瞳に吸い込まれそうになるほどだ。しかも、ラビに似ているとまできた。このまま顔を出さないでもらった方が良かったかもしれない。
いや、それはビラに失礼だな。だって、本気を出してくれると言った彼女の思いは
ラビに似ているからってなんだ。ビラはビラだ。私から再戦を申し込んだというのに躊躇おうとしていてはダメだろう。
私はビラの目を見る。引き込まれそうなのは変わらない。
けれど、私は決めたんだ。ある男から、挑んでくるものがいると聞いてこのダンジョンにいるビラの話を聞いて思ったことがあったから。ずっと待っていた挑戦してくる相手がこんな弱い奴で彼女はがっかりしてしまったと思う。だから、そんな彼女のためにも……
半分は自分のためかな。
強くなりたい。少なくとも、彼女を失望させない程度には。今だけでもいいから、私の弱さはどこかへいってほしい。
彼女と剣を交える時に動かなくなるような自分ではいられない。
(私は強い!)
心の中でそう唱えて私は短剣を構える。
覚悟が決まったんだ。意思を持った、強くて敵わないボスと戦うという覚悟が。
倒されてしまった彼女がどうなるかという想像はつく。
それでも彼女が求めるのは、本気で戦える相手だろう。
私がその相手と認めてはもらえないような気はしている。
しかし、私は彼女の……ビラの本気を受け止めたいのだ。
彼女が本気になって戦える相手がどれほどいたのだろうか。
きっと、少なかったはずだ。彼女に挑戦してくる相手が少なかったのと同じように。
先程は語っていなかったがもしかしたら、何度かは手を抜いてしまったことがあるかもしれない。そう思うのは剣士としての彼女に失礼だと言われそうだが、私はそう考えてしまったのだ。
師範にも勝ち、自分の道を歩んできた彼女。それなのに、他の誰かと、自分を高めてくれる相手との戦いはあまりできなくて悲しい想いをしてきたであろう彼女の姿を思い浮かべてしまった。
だからこそ、私は彼女に手抜きを一切せず戦ってほしい。途中で弱い姿を見せたら彼女が手を抜いてしまう可能性もある。
ならば、私は強くあろう。今だけは、ね。
「では、我からいかせてもらおう」
刀を構えたビラが言った。
ビラがどんなことをしてくるかは不明だ。
だが、死合というのは常に真っ向勝負でなければならない。
手の内が分かっていては真っ向とは言えないだろうな。言える場合もあるとは思うけれど。
まあ、この場合はそれは適応されない。
なぜなら、私が彼女の想いをこの場で受け止めると決めたからだ。
私達は全てをぶつけて、強くなるんだ——
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