第38話 チェス?
雪原の三階と四階はあっという間に済んだ。それもそのはず。何故なら、何もいなかったから。
今までなら、ボスがいる場所にいく時には結構何かがいたのにな。まるで、誰かが全てを倒したような、そんな感じもあった。
ボスがいる場所まで何もいない、すべてを倒したような跡……それにはとても違和感があったのだ。
そして待ち受けているものが何か分からないまま私達はボスのいる場所へ来た。
そこにいたのは二足で立っているウサギ達。きてしまった、素直にそう思った。
私にとってウサギは大切な存在。ラビに出会ったから。それなのに、まさか対峙することになるだなんて……
いや、こういう時こそ冷静にならねば。
まず、この場所にいるウサギ……というよりは地面に注目しよう。地面がチェス盤のようになっている。ウサギだってチェスの駒のようだ。ただ、一体だけ緑色のフードを被っていてよく見えないのがいる。
けれど、チェスト同じであればキングを倒せば終わるはず。
「王冠をつけているのを狙って!」
「了解した!」
ライオスが素早く移動した。
キングを守るウサギ達を物ともしない。ただ一点だけを狙っていた。
ライオスはキングに剣を振るった。
見たくない光景。けれど、受け止めなければいけない時がきたのかな。
戦いたくない、傷つけたくないって言っていた自分を超えなければならない時が。
きっとそうだ。だって私の勘がそうだって言ってる。それに、まだ倒せていないとも。
ライオスが斬ってしまったはずのキングはピンピンしている。
「復活しやがった⁈」
「
ヴォルフとニコは不思議そうにしている。
しかし、私には分かった。キングは元から斬られていなかったのだ。ライオスの剣は防がれたから。
もう一つ分かったことがある。この場所の真のボスが誰なのかということだ。少し見えた悲しそうな目をしているフードを被った子。その子がライオスの剣を防いだ子であり、ここのボスだろう。
その子の
「また期待はずれ、か」
という言葉が私の耳にやけにハッキリと聞こえた。喋ることに驚いた。今までのボスは鳴き声しか出さなかったから。
しかし、それだけではない。その言葉はどこか、悲しそうな退屈そうな意味が込められた言葉。そう思ったのだ。
それを言った意味を私に理解することはできない。
何かの意図があって言ったわけではないと思う。それでも、聞こえてしまったのだ。
フードを被った子の、思わず出てしまった言葉が。
期待はずれ、そんな言葉が出るのは何故か。それを考えたってどうにもならないけれど、今私は伝えたいと思ったことがある。
「私と一対一の勝負、しませんか」
私は、フードを被った子の前に立って言った。承諾してくれるかはこの子次第。
これは私のためでもある。私が乗り越えるためには、自分で戦わなければ意味がない。
そう思ったから申し込んだんだ。
私だって、ずっと立ち止まっているわけにもいかないから。
「自ら我に立ち向かう奴がいるとは。少しは期待しようではないか。その勝負、お受けいたそう」
その子が承諾してくれたので私はヴォルフから降りて短剣を取り出した。
狙うはもちろん勝ちだ。期待はずれだと言われないためにもね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます