第34話 魚って美味しい
「そういえば今回は誰もスキル受け取ってないのかな?」
これまではボスがいなくなったら誰かにスキルが付与されていた。しかし、休んでいる間に変化は見られない。
「いや、多分オレだ」
「えっ?」
ヴォルフが言った。
全然気がつかなかった。けれど、本当のことなのだろう。
「なんつーか、できなかったことができそうっつーか……そんな感じなんだよな」
上手く説明できないといったところか。
言おうとしていることはなんとなく伝わるのでいいのだが。電撃が使えるようになったということだな。
あれ?でも……
「妙だな。ヴォルフは冒険者登録をしていない。それなのにスキルが使えるようになるとは……」
ライオスが呟く。
「
続けてニコも言った。
私もそう思っていたのだ。何故スキルがヴォルフに付与されたのか、と。
ヴォルフだけは冒険者登録をしていないから最初にあるスキルさえも分からない。それなのに、先程のトラのスキルが移った。
その理由はなんなのだろうか。深く考えても仕方がないのかもしれない。
このダンジョンは色々と分からないことばかりだ。次々と謎が深まっていく。解明できるのは最深部に辿り着けた時、か。
「んなことどうでもいいだろ。それよりお前らは飯食っとけよ」
ヴォルフが言う。
私が難しい顔をしていたからかな。
考えごとをすると黙り込んでしまうのは私の悪い癖だ。
「そうだね!いただきます」
ご飯を食べなければ力は湧いてこない。
私達が食べられるものはヴォルフには食べられないものだけれど、ちゃんと別のものも出ているので安心だ。
オオカミって魚は食べられるのかな。まあ心配だしあげない方がいいか。
それにしても魚を食べるのは久しぶりだ。この世界に来てからは食べていなかったからなあ。
ダンジョンの仕組みは全くと言っていいほどには分からないけれど、美味しいものを提供してくれることは感謝したい。どこからのものなのかも不明で怖いけれど。今のところ体調は悪くなっていないので大丈夫だと思う。
いっぱい食べて満腹になると眠くなってくる。なので、少しの仮眠を取ることにした。
ここからも進んでいかなければだし、英気を養わないとね。みんなも疲れていると思うし。決して、私がもふもふしながら眠りたいとかいうそんな不純な動機ではないから。それもあるのだけれど。
ヴォルフにもたれかかって寝たいなと思っていたのだ。ライオスはこのダンジョンを攻略するまでは人間の姿のままだろうし。
それに、もたれかかって寝ると安心できるのだ。
そんなことを考えながらもたれかかり、目を閉じた。
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