第33話 それ使ってくるとか聞いてない!

 怒られながらも再びヴォルフに乗せてもらい行くことになった。

 ついに第三のボスが待っている場所。

 私は不安と期待が入り混じっている。

 どんな動物が出てくるのかという期待と、無事に通れるのかという不安だ。

 下に行くごとに強くなっていくボス。きっと今回のも強いだろう。

 そんなことは承知の上で挑む。まだまだ先は長いし。


「あれが今回のやつか」


ライオスが剣を構えて言った。

 姿を見るとこれまでと同様に大きい。

 その動物は石の足場の上に四足で立っている。毛の感じや、模様を見る限りだと……おそらくトラだろう。

 しかし何故トラなのだ?ここまで来るまでは水に対応する動物たちだった。

 それなのにトラ。しかもこの場所にも水は張られている。どういうことなのか見当がつかない。

 だが、それはすぐに分かることとなった。


「ぐぁっ」


 悲鳴をあげるライオスの声がした。


「ライオス⁈」

「身体が、しびれて、いっ」


痛い。それが出てこなかったのだろう。

 身体がしびれている?それはもしかして……そう思い水を見た。

 そこには電気が通ったような跡があった。

 間違いない。あのトラが発したものだ。

 つまり、電撃。それに触れてしまったのなら、しびれるのも無理はない。しびれるだけで済んだのならまだ良かったと言えるものだ。


「ライオスはそこの石の上で待機!ニコは治療をお願い」

「承知しましたわ」


私は指示を出した。

 こちら側にも石の足場があって良かったなあ。なかったら電撃をくらい続けることになっていた。

 私も足場を移動し、考えることにした。


 電撃は足場を移動しながらならなんとか避けられる。石の足場はいくつもあるからな。

 肝心の、トラの攻略方法なのだが……電撃を放ってくるしかしてこないのでどうにかはできると思う。

 しかし、これはまた怒られることになるなあ。


「あの、ヴォルフ私一人であそこに行ってきてもいいかな?」


 私はトラがいる場所を指差して言った。


「ダメだ」

「ヴォルフにケガさせたくないんだよ〜」

「身軽に動きてえのかもしんねえけどよ、オレの方が動けるからな?あと、オレはんなやわじゃねえって言っただろうが‼︎」


また怒鳴られてしまった。しかも、私遠回しに運動できないって言われた。事実だから反論しようがないのだが。


「……じゃあ、お願いします」

「おう」


多分言っても聞いてもらえないだろうし私が聞き入れた方が早く済む。

 そこから、ヴォルフはジャンプをして足の足場を移動していく。

 トラはその間にも電撃を放っているが当たらない。水を介してしか攻撃ないようだ。

 なので、今水に当たったら、その時点で感電してしまう。それは避けて欲しい。

 そのことは事前に伝えてあるのでヴォルフなら大丈夫だと思う。


 そうして私はトラの前まで来た。

 私はヴォルフからジャンプをし、トラに跨った。

 もちろんトラは暴れる。それでも、しないとって思ったのだ。傷つけずにここを突破するためにも。私はトラの背を優しく撫でた。

 少しずつだけれど、落ち着いてくれる。

 

「『怖くないよ。落ち着いてね』」


私がスキルを使って撫でると完全に静かになった。そして、トラは消えた。

 私はそのまま落ちる……と思ったが、ヴォルフが上手く乗せてくれた。

 

「ありがとう」

「急に乗り移るからびっくりしただろうが」

「へへっ、ごめんね」


 撫でていたあの感触を覚えている。それなのにもうトラはいないのだ。

 ボスは倒したと認定されると消えてしまう。それは、悲しいことだと思う。

 けれど、それがこのダンジョンのルールなのだとするなら従うしかない。


「ライオスは無事?」


雷撃をくらっていたから気になって様子を見た。ニコの治療が終わったようで元気そうになっている。


「ああ。ニコが回復させてくれたからな」

「大したことではありませんわ」


ニコが嬉しそうに頬を緩ませている。

 好きな人に褒められると嬉しいのはどこの世界でも変わらないみたいだな。

 

「よし、それならここでゆっくりと休んでからまた進もう!」


 私もさすがに疲れたしぐっすり寝たい。

 ということで、私達は少し休息をとることとなった。

 

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