第31話 速すぎないかな⁈
そして私達は次へと来た。
また水だった。地面が見えない。
いや、踏んではいる。水で見えないけれど深さはそんなにないのだ。それに、透けているから完全に見えないわけではなかった。
足場は悪いだろうけど。
私はヴォルフに乗っているから分からない。
「進みにくくない?」
私はみんなに聞いてみた。
「まあまあだな」
「俺は気にならない」
「少々濡れてしまうのが難点ですわね……」
三者三様だ。
ニコは濡れるのが嫌なのかな。そういえばネコは水が苦手だったか。
ニコはネコだからそれでかな。
「そうなんだね」
私は頷いて返事をした。
確かめてみたいけれど降りると怒られそうだしなあ。ここではやめておくか。
ここでは、といってもあとからやるわけでもない。やるかもしれないけれど。それは私が好奇心に負けた時だな。
まあ、なるべく気をつけよう。
それにしても、中々何も出てこない。
ここには何もいないのだろうか。いないならいないで次に行けるからいいのだけれど。
こう思ってると出てくるのだろうなあ。
今までだって何もいないと思った直後に何かが襲ってきていたし。
「なんか泳いでるぞ!」
ヴォルフが声を上げた。
思っていた通り、何かが出てきてしまったようだ。
なんだったっけ。こういうのをフラグ回収と言うのかな。つまり私がフラグを回収してしまったということか。
ただ思っていただけだというのになあ。
だが、出てきてしまったのだからどうにかするしかない。ここまでだってどうにかしてきたのだから。
「ヴォルフ、それってどこにいった?」
「オレの前を泳いでったぜ」
「俺の前も通ったな」
「
みんなの前を通った。
それほど速いということか。
水の中で、速い……そういう魚はいくらでも思いつく。
しかし、魚ではないだろうな。このダンジョンの傾向を考えると。
ではなにか。その答えは多分あれだろう。
「うおっ、また来た」
私は今度こそしっかりとその姿を目で見た。
やはり、ペンギンだった。ペンギンなら速いのも納得だ。にしても、あのフォルム可愛い。もふもふではなくツルツルだけれど、姿が可愛いからなあ。
傷つけたくはないな。どんな動物だったとしてもだが。
「よしっ、走って逃げようか!」
私は手を叩いて提案した。
「攻撃してこないなら、逃げた方が早いと思うんだ」
続けて言うと、頷いてくれた。
先程から泳いでいるだけでこちらに害はない。ペンギンが泳ぐ場所に私達がいることで突進されそうにはなっているけれど。
気持ちよく泳いでいるだけなのだ。それならば、私達がここの階から移動すればいい。
「うむ。セリナの言う通りだな」
「
「ライオスにおぶってもらえばいいだろ」
ヴォルフが言った。
何も知らないはずなのだが、ナイスアシストをするものだなと感心した。
そしてライオスがニコをおぶることになった。ニコは恥ずかしがっていたけれど、危ないからということでそうなったのだ。
「さて、いっせーの!」
私の合図と共にみんなで一斉に走り出した。足場に水がある中走るのは大変なこと。それでも走ったのだ。私だけ楽をしているようで申し訳なかった。
でも、運動があまりできない私が走ったところでたかがしれているし、ペンギンから逃げられなかっただろうからな。
「ここまでくれば大丈夫だな。階段のところまでは襲ってこないだろう」
ライオスがニコをおろしながら言った。
ニコはお礼を言っていた。
「だな。んじゃ、次行こうぜ」
ヴォルフは早く進みたくてうずうずしているみたいだ。
面白いことがある予感がしているのかもしれない。
「そうだね。行こう」
私は真っ直ぐ前を向いて言った。
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