第29話 怖さ
先程のがサメだということはまたやってくるだろう。
ライオスが後ろに転倒した時に水の音を響かせてしまった。それに誘われるかのように何体もやってくる。
あれ、数え方って体であっているのだろうか。まあ、そんなことはどうだっていい。
だって、見事に私の予感が的中してしまったのだから。思っていた通り、サメは何体もやってきた。
サメというのは襲ってくるスピードも速い。それを避けるというのはとても大変だ。
しかし、ここはまだ十階を超えた最初の場所。そんなところで終わるわけにはいかない。
とりあえずスキルでどうにかしようと試みているのだが、『止まれ』だけではさすがにキツくなってきた。他に何か言葉はないかと考えてはいる。しかし、思いつかないのだ。
なので分身を使うなどもしているけれど、サメはこちらに向かってくるばかり。このままでは埒が明かない。
ライオスは剣で対処できてはいるのだが、ニコを守りながらだから戦いづらそうだ。
ニコだって短剣を持ちながら戦ってはいるのだが、心配なのだろう。
食べられたら即終わり。リセットのないこと。これはゲームではない。
そう思うと、冷や汗が出てくる。私の足が震える。震えていたら危険だということはもちろん分かっている。しかし、私の身体がいうことをきいてくれないのだ。
怖いという感情が私の心を覆う。考えが回らない。次はどうすればいいのか、私はなにをしたらいいのか……
そんな時だった。
「セリ!前!」
ヴォルフの声がしたのは。
私に向かってくる一体のサメ。
ヴォルフは私の元に駆けつけ颯爽と乗せた。
「お前なにしてんだ!こんなとこで考え事なんてしてたら一発で終わんだぞ⁈降りるなって言っただろうが‼︎」
ヴォルフが私に怒った。
今まで面倒くさそうにされることはあったけれど、真剣に怒られたのは初めてだった。
ヴォルフから降りるなと言われていたのに、勝手に降りたからかもしれない。
「ごめんなさい」
私は頭を下げ素直に謝った。
「ん、ちゃんと乗っとけよ」
ヴォルフの顔はオオカミだからちゃんとは分からない。でも、微笑んでくれたような気がした。心配されるって、嬉しいことだなあ。
あまり心配させるのも良くないことだが。
気づけば、私の足の震えはなくなっていた。
「セリナ、ヴォルフに何を言われたかは分からないが、集中しろ」
「
ライオスとニコが剣を振り回しながら言っていた。
剣を振り回すのを見るのは嫌だ。しかし、サメは少し振り回されたぐらいでは傷はつかない。油断をしていればこちらが終わる。
サメに喰われてこの世界での人生を終えるだなんてまっぴらごめんだ。
私はまだこの世界にいるもふもふを堪能しきっていない。それに、このダンジョンの秘密?も暴きたい。まだしたいことが沢山あるのだ。それなのに、ここで終わるだなんてもったいなさすぎる。
ならば、覚悟を決めよう。
私は剣を構える。私を助けてくれたヴォルフを守るために。
(怖さは強さに変わるって証明してみせる!)
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