第15話 街
「おい、ついたぞ」
ヴォルフが言ったので私は背から降りた。
降りた場所で見えた景色は……
商店街のようだと思った。
果物を売っている店が特に多い。
それを売っているのも買っているのも二足歩行をする動物たち。
そして冒険者の装備をしているもふもふもいる。いたらいいなとは思ったけれど、本当にいるとは思わなかった。
「んで、どうすんだ?」
「とりあえず服欲しいな」
私は今着ている服しか持ってない。
さすがにこちらで生活していくというのだから新しい服がいくつかは欲しい。
「服、なあ。お前のサイズのやつあんのか?」
「あっ、確かに……」
この世界の服全部小さそうだしなあ。
私に合うのがあるだろうか。
「それなら冒険者ギルドで見たぞ。冒険者に獣人が多いからかもしれないな」
ライオスが言った。
冒険者ギルドもあるのかあ。
なんだか混乱してきた。
ダンジョンはあるし、冒険者ギルドはあるし、商人はいるしで……
しかもそれをしているのが人間ではなくもふもふな動物だとはねえ。
さすがに驚く。
「そうなんだね。じゃあまずそこに行きたいな」
「ああ。俺もギルドに登録しているから案内しよう」
ライオスが前を歩いた。
ギルドに登録していたというのは初耳だ。
言う必要がなかったからだろう。
まあ、どちらでもかまわない。言われていても言われていなくても、違いはない。
「セリナ、ここが冒険者ギルドだ」
そう言ってライオスが扉を開けた。
そこは物語の中で描かれていたような場所。
掲示板が立ててあったり、椅子に座り食事をしている動物がいたり、受付もいたり、色々とある。
冒険者ギルドというか、酒場と兼用になっているみたいだ。
お酒ではなく、ジュースだけれど。ライオスの言っていた通り服もある。
冒険者用のものみたいだ。
「マノ、この子に合う服はあるだろうか」
ライオスが受付に聞いた。
受付の動物はどうやらナマケモノのようである。とても小さな、特徴のある耳。私は見間違えない。
ゆっくり動く姿もたまらない。
ちゃんと仕事できているのかは不安。人形だから大丈夫なのかな?
「ライ、オスくん、かい?その、子は、だれ、だね?」
とてもゆっくりと喋られた。
「私はセリナ。人間です」
「ニンゲン、かね。数十年前に、来たねえ。その時に作った服が、あるはず、だよ」
マノと呼ばれたナマケモノが言った。
数十年前か……伝承の人のか?
マノはゆっくりと動き、奥に戻ってから再び出てきた。
「あったよ。これで、いいかい?」
ワンピースタイプで汚れのつきづらそうな素材でできていて、ポシェットと長靴も置いてある。ショートパンツもあるから下に履くこともできる。動きやすそうな服だ。
「はい。それがいいです」
「じゃあ、会計、頼むよ」
マノが言うと、ライオスが通貨を出した。
「これで足りるか?」
「ちょうどだね。まいど〜」
ライオスが袋に入れられた服を私に手渡した。
「ありがとう」
私はお礼を伝えた。
すると、ライオスは微笑んだ。
「これぐらいどうってことないさ」
そういうところがかっこいいんだよなあ。
女の子にモテそうな感じというか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます