第13話 次のステップへ!

 食べ終えて手を合わせる。


「ふぁ〜眠くなってきちゃった……」


 あくびが出た。ずっと動いていたから、体が疲れてしまったのだ。


「寝たらどうだ?」

「うん、そうする……あっ、ライオスに頼みたいことがあるんだけど……」


 私は目をこすりつつ言った。

 してみたいことがあるのだ。それも、ライオスではなければならないこと。


「なんだ?」

「あのね、ライオンの姿に戻ってもらってもいい?」

「かまわない」


 ライオスは頷いて、ボンっと音を立てた。


「これでいいのか?」


 そして再びライオンの姿になっていた。


「それでね、もたれかかって寝てみたいんだけど、だめ?」

「そんなことか。かまわないぞ」

「本当⁈やった!」


 一度はしてみたいと憧れていたライオンにもたれかかって眠ること。

 まさか叶う日がくるとは思ってもいなかった。


 私はライオスにもたれかかった。


「ありがとう。おやすみ……」

「ああ」


 目を瞑り寝る。もふもふに包まれ、幸せな気持ちになりながら。

 ヴォルフとはまた違った安心感を抱きながら。

 ぐっすりと眠った。それはもうぐっすりと。


「セリ、セリ!起きなさい」


 もふもふの手で額をペチペチと叩かれた。

 そうして私は起きた。


「ん、ラビ?どうしたの?」

「どうしたもなにも、もうお昼よ?みんな起きてるわよ」


 ここって時間の感覚あったのか。

 って、そうではなくて


「お昼⁈お昼って十二時ってこと⁈」

「そうよ」


 私、そんなに寝ていたのか。楽しい夢をみていて起きたくなかったからかな。

 もふもふをまだ背に感じる。

 ということはライオスがいるということだ。

 私はすぐにどいて


「ごめんね。動かないでいてくれたんだね」


 と言った。


「気にするな。それに幸せそうに寝ていて、起こしたくないと思ったんだ」

「いいやつだよな、ライオスって。オレだったら動いてるぜ」


 優しい言葉をライオスは返してくれた。

 ヴォルフは相変わらずひねくれている。

 その時、ヴォルフに頼まなくて良かったと心底思った。

 オオカミの毛には埋まりたいからまた頼むのだろうけれど。


「で、セリはこれからどうするの?まだもふもふを探しに行くの?」


 ラビが聞いてきた。

 私は昨日置いておいたことをもう一度考えてみる。

 種族によっては言葉が伝わらないことがある。けれど、私ならば伝えることができる。

 想いを、悩みを、聞くことだってできる。

 もしかしたら、それがこの世界での私の役割なのかもしれない。

 なら、したいことは一つだけだ。


「私、悩んでいる動物の相談に乗りたい。それと、その種族ってだけで嫌われるのをなくしたい。私なら、できると思うから」


 ライオンは毛嫌いされるって、悲しそうにしていたライオス自身の優しさも伝えられた。

 それなら、他の動物達のいいところも伝えていきたい。


「ほーん?いいじゃねーか。つーことはまだ森を進むのか?」

「うん。そのつもりだよ」

「じゃあついてくか。移動するにはまだ必要だろ?」


 ヴォルフが言う。

 まさかついてくると言うとは思わなかった。

 ぶっきらぼうで、私のことは雑に扱っていると思っていたから。


「きてくれるの?」

「まあ、暇だしな。お前となら面白そうだ」


 最初もそう言っていた。

 ヴォルフにとっては、面白さというのが最優先なのか。

 ついてきてくれるというのは、とてもありがたいけれどね。


「俺も一緒に行ってもいいだろうか?」

「ライオスも?」

「ああ。実は住む場所を探していたら君達に会ったんだ。だから、一緒に行かせてもらえると助かる」


 そんな事情が……怖がられて居場所がなかったのかもしれない。

 そういう動物の居場所をつくることが、私のしたいことだ。

 実際の意見を取り入れられるというのは、いいと思う。


「もちろんいいよ」

「これからもよろしく頼む」


 ヴォルフ、ライオスときたら……

 私はラビを見る。


「わ、私はついていけないわ。本当は行きたいけれど、これ以上危ないところには行きたくないの。だから、ごめんなさい……」


 涙ぐみながらラビは言う。

 それもそうだ。ラビはうさぎ。うさぎとは、本来仲間で集まって生活する。

 それなのに、私についてきたから仲間と、家族と離れてしまっているのだ。

 早く帰りたかったであろうラビを、これ以上連れ回すわけにはいかない。


「そっか。これまでありがとう。ね、最後にぎゅーってしていい?」


 こくんと頷いた。

 私はラビを抱きしめた。

 もふもふだ。少ししか一緒に過ごしていない。けれど、ずっと一緒にいたように感じる。

 これをもふれないとなると寂しくなる。


「ねえ、セリ。ありがとう。私と探検してくれて。ワクワクして楽しかったわ」

「私こそだよ。元気でね」


 ラビを離す。

 これからは別々の道を歩んでいく。


「ラビ、帰ったらセリ達との話してやるから待っとけよ」

「期待しないでおくわ。セリのこと頼んだわよ!」


 ラビは手を振ってきた道を戻った。

 ヴォルフとラビはまた会うのだろう。

 それがいつかは分からないけれど。

 私の気が済むまで旅をしたあとかもしれない。

 それか、ヴォルフが他に面白いことを見つけた時かもしれない。

 可能性は色々ある。

 それまではこの世界が平和であり続けてほしい。

 どうか、伝承のようなことが起きないように。私はそう願う。


「セリナ、行かないのか?」

「ん?今行くよ!沢山の動物に出会いにね‼︎」


 これからも、もふもふを探すぞー!

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