第7話 試食会の予定

冷やし中華の季節も終わり、

おでんの季節がやって来た。

無精者の俺の事だからおでんも、調理済みの

ビニール袋入りの袋ごと湯煎するか鍋に開けて

温めれば済むだし汁入りの、お気に入りメーカーの

製品を大量に仕入れた。

1度大量に湯煎して熱々のままストレージに収納しておく

これで注文が立て込んでも開封して丼に移せば済む。

やけどには注意だが。


「クリームシチュ―食いてえ」思わず独り言を言ってしまった。

「私もー。ねえ作って」とミチ。

「ちょっと待って、俺ルーなんて作ったこと無いから……」

俺は今買えるメーカー製の固形ルーが無いか探してみる。

レベル20になった時、おでんが作れる!と感激して、

他の詳しい内容を見ていなかったのだ。有った。カレールー

のところにハヤシライスとクリームシチューのルーが入っていた。


ついでだから、ハヤシライスも作って、試食会を開こう。

商業ギルドのシェリーさんと、開店2番目のお客様のビオラさん。

連絡が付けば、リンゴ姫のルシールさんにも来てもらいたい

ということをミチと、アルバイトの太一に話した。

試食会を開くのは2人とも賛成してくれたが

、商売外の事なので、いつもの場所は拙いのではと

ミチが言った。

ここではどうですかと太一。確かに外は広い庭が有るし、

隣近所とも離れていて、大声出しても迷惑にならない。


雨が降ったら屋内のキッチンスペースが広いから

10人位座れる食卓がおけそうだ。

「ミチのお爺ちゃんには感謝感謝だなあ」

「えへへ、ここ作る時お祖母ちゃんと大喧嘩してたけれど、住居

スペースは、もう1部屋欲しかったね」


「問題はここの場所、誰も知らないってことですよね」と、太一。

「いつもの屋台の場所に集まって貰って、乗合馬車を貸し切って送り迎えしたらどうでしょう」

「「それだ!!」」

「あとで馬車屋さんに貸切出来るか聞いてみるとして、何時

にするかだね」

「水曜日ではどうだ?定休日で申し訳ないけれど」

「「問題ないです!!」」

「お、おお、後は時間だが参加予定者さん達に訊いてみないと決められないな、じゃあ俺の居ないときに来たら訊いておいてくれ

「「はい」」


その日の営業で夜8時ごろに奇跡的に

シェリーさん、ビオラさん、ルシール姫と護衛の2人が

集まった。

7時頃からなら、私の馬車で送り迎えいたしますよ。

その代わりって言っては何ですが、護衛2人と御者1名も

ご招待頂ければ嬉しいのですが」

「お安い御用です。では、この後、俺のキッチンの場所を覚えて

頂いて、その後、シェリーさん、ビオラさんを送って頂けるとありがたいです」


普通なら公爵令嬢にこんな事頼めないだろうが、

元日本人同士の気安さで頼んでしまい、快く受け入れて貰った。


今度の水曜日の夜、時間は送迎次第ということで、

お開きにしましょうかという時に、

「上杉先生、御無事でしたのですね。良かった」

そう言ったのは白い宗教服みたいな服を着た、とても綺麗になった

日田神加恋ひたかみ かれんだった。

「日田神じゃないか!」「聖女様!」

俺とルシール姫の声が重なった「「どうしてここに?」


「ルシール様が屋台で日本のカレーとかラーメンとか召上ったとおっしゃっておられたので、もしやと思って探していたのです」

「店主さん上杉さんとおっしゃるんですね」

「あ、これは失礼しました。あの時は岩手出身としか言ってなかったですね。上杉浩二です。改めてよろしくお願いします」

「はい、浩二様」

「何で下の名で呼ぶの?」ぴきーんと云う声や音が聞えた気がした。

「聖女様って?」

「私の称号が【聖女】で、ユニークスキルが【癒し、浄化】

でしたので、あの後直ぐに神官様がおいでになって、【聖女】

認定されて神殿に入ったのです」

「じゃあ、田代や木村、小林達は?

「勇者としての教育訓練を受けているそうですが,殆ど接触が無いので

今はどうしているのかはわかりません」

「そうかとにかくみんな無事に過ごせてるようだな、良かった」


【聖女】にも当然隠密護衛が付いていた。彼等は俺の居るキッチンも

把握しているようで。

「ああ、あそこの1軒屋ですな」と言っていた。

結局加恋達も参加することになって、

加恋達は別行動で家に来ることになった。


随分賑やかになったもんだ。

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