第2話 ポトフ

いよいよ今日から屋台日本屋のスタートだ。

カレーは昨日のうちに寸胴鍋に甘口、中辛、辛口の3種類

作って置いた。それを今朝温めなおして召喚の時に有った

ストレージというマジックボックスみたいな倉庫空間に

入れておいた。時間停止機能付なので取り出すときも

熱々のままだ。皿や丼の食器類はミチのお爺ちゃんの

物をそのまま使わせてもらう事にした。

箸は食材召喚時に、割り箸を100組用意した。

フオークもスプーンも忘れずに用意しておく。



召喚時に、獲得した能力の中には生活魔法も有った。

その中には【洗浄、消毒、乾燥】が有った。屋台運営にとって有難い魔法だ。神様が俺を応援してくれてるようだ。

ゴミもストレージの中の異世界ゴミ空間に入れて置けば自動で

消滅してくれる。これでプラごみ問題も解決だ。


あれもこれも確認してストレージに収納して商売場所の

市場の一角に屋台を取り出してセットした。

開店前に隣近所の屋台に挨拶廻りを忘れない。

ミチは顔見知りなのであちこちから声を掛けられていた。


匂いで客寄せしようと中辛カレーの寸胴を取り出して弱火に掛ける。

焦がさないようにかき混ぜながら客を待つ。


ミチが呼び掛ける。

「さあさあ本日開店日ノ本屋です。あの勇者様達の故郷の郷土料理

カレーライスと、ラーメンが美味しいですよ」

勇者たちに恨みは無いが、宣伝にその名を利用させてもらう。

許可など取っていないが噓は言っていないのでOKだろう。

最初のお客さんは商業ギルド受付嬢の

シェリーさんだった。エルフの超美人さんだ。

ミチの話によると、お爺ちゃんの料理ポレラのフアンで、

お爺ちゃんの元気な時も良く来てくれていたのだそうだ。


お爺ちゃんが亡くなってすっかり元気がなくなっていたミチが

屋台を出すことになったのを聞きつけて応援に駆けつけて

くれたのだった。


「わー、なにこれとても美味しい。カレーライスっていうのね。

流石勇者様の故郷の郷土料理ね」

超美人のシェリーさんの絶賛する声で金額の高さに

二の足を踏んでいたギャラリーの人の中からも注文してくれる

人たちも現れて。急に慌ただしくなった。

「あのう私はラーメンっていうのを食べてみたいんですけれど

銀貨1枚の醬油っていうのをお願いします」

「はい、お待ちください」

俺は○○1番醬油味の袋を破り丼にスープを開けておく

インスタント麵を指定時間通りに茹でて、スープにお湯を注いで

良く溶かし、麵を湯きりしてどんぶりに開ける。

この時俺が何をやっているのかは客には分からない。屋台事体に

付いていたレシピを盗まれないようにする特殊機能だ。ミチの

お爺ちゃんが付けておいたのだ。それだけ大事なレシピだった

のだろう。


「はいお待ちどうさま、熱いので気を付けてお食べ下さい」

俺はミチの分も作って置いたので、ミチにお客さんの隣りに

座らせて

「食べ方はこの子の真似をして食べて下さい」

ミチは割り箸を割って

「いただきます」と言ってまず蓮華でスープを飲み、

「うーん美味しい」

麺ををすする。

隣りのお客さんも真似するが箸を上手く使えないようだ。

「お嬢さんフオーク使ってもいいんですよ」

「いえ、頑張ってお箸をつかえるようになります。

勇者様の料理を勇者様の流儀で食べれたと友達に

自慢したいですから」

「……そ、頑張ってね」

「はい、おじ様」

様と言われてもおじさんに変わりないんだよな。

気を取り直して仕事する。

「店長さんはポレラは作らないんですか?

シェリーさんが訊いて来た。

「すみません、最近こっちに来たばかりで

ポレラっていう料理がどんなものなのか分からないんです」

『ミチちゃん、おじいさんはレシピを残しては

いなかったの?」

「うん。探したんだけどお爺ちゃんの頭の中だけに

有ったんだと思います」

「そう残念ね。あの味無性に食べたくなる時が

有るのよ」

「どんな料理なのでしょうか。焼くのか、炊くのか

揚げるのか?

「煮込み調理ね。このカレーに使ってる具材が

入ってたわ。それと腸詰め」

あ、それってポトフじゃないだろうか?

「思い当たる料理が有ります。今は材料が無いので

もしよろしければ明日も来ていただけませんか?」

「え、分かりました明日同じ時間に来てみます

楽しみですわ」

「え、あのお爺ちゃんのあれが食べれるの?

あたしも来ますから予約してもいいですか?」

ラーメンの女性も乗って来た。

お爺さんのポレラってみんなに愛されていたんだな

精一杯頑張って作らねば。

家に帰ってポトフづくりに取り掛かる。

幸い、ウインナーソーセージは、召喚可能な材料に

入っていたので代金をステータス画面の支払い画面に

金額を記入するとストレージに収納して置いた硬貨から

金額分が消えていた。


コンソメスープの素やら、塩胡椒なども買っておく。


正式なレシピは知らないので、自己流レシピで作っておく。

ミチに味見をして貰う。

「お爺ちゃんのポレラとは見た目が違うけど匂いは似てる

わ、わ、とっても美味しいんですけど……浩二さんって天才?」

「合格かな?」

「う、うん。えっと、ポトフって言ったっけ。ポレラじゃなく

ポトフって料理名で良いと思います」

「じゃあこれで食べて貰おう。

お爺さんのポレラはいくらで売ってたの?」

「えっとね銀貨2枚だったけどこれなら銀貨3枚でもいけると思う」

立て看板を1枚増やした。

【ポトフ銀貨3枚】

ポトフも寸胴鍋に作って置いた。

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