異世界屋台日ノ本屋

霞千人(かすみ せんと)

第1章 異世界屋台の始まり

第1話 カレーライスとラーメン

「へいらっしゃい。何にします?」

「そうだな、カレーライス中辛大盛りで」

「へい、毎度ありー金貨1枚と銀貨3枚です」

すると屋台傍で見ていた大柄の男が口を挟んだ。

「どんな豪華な料理かと思ったら、こんな茶色のどろっとした料理に金貨1枚と銀貨3枚なんて

ぼったくりじゃねえか!」

すると、客の一人が言った。冒険者ギルド長の

ケルトさんだった。

「坊主、文句は自分で金払って食ってみてから言いな」

「あれ、ギルマス。ギルマスほどの人間がだまされちまって、まあいいや、俺もこの人と同じものをくれ」

「へい、どうも。カレーライス中辛大盛。金貨1枚と銀貨3枚ですよ。代金と交換でお願いします」

「後払いじゃ無いのかよ。ほらよ金貨1枚と銀貨3枚」

「へい毎度アリー」

「ふむ。匂いは旨そうだな。だが味の方は……

パクッ、「んん、これは美味い美味いぞ!」

パクパクパクパク

[これは、これはとんでもなく美味いぞー!」

「どうだこれでもぼったくりだと思うか?」


「す、すみませんでしたー俺が間違っていました」


★★★★★★★★★★★★★★


この日、屋台日本屋の常連客が1人増えた。

しかも日本人の転生者でもなく転移者でも召喚された者でも無い現地人の常連客が。


俺は上杉浩二30歳。日本人の巻き込まれ召喚者だ。

勇者では無かったので、城を追い出された。

異世界でどうやって生きて行こうか迷っていた時に、

ステータス画面の端に【自炊料理人】のユニークスキルが有るのに気が付いた。そりゃアパートの一人暮らしで自炊していたけれど、それがユニークスキルになるなんて。

その称号に触れると作れるメニューと材料を

召喚出来る事を知った。


まだレベル1だったので、カレーライスと、

インスタントラーメンだけだったが何度も作っているうちに

レベルが上がって冷凍ラーメンも召喚出来るようになった。

インスタントラーメンと違って有名店の冷凍ラーメンは凄く美味かった。

「これって商売になるんじゃないか?

でもどこでどうやって作って売るんだ?

悩んでいると、

「おじさんもしかして日本人?」

と話し掛けられた。

「ああ、お兄さんは日本人だけどあんたは?」

「あ、ごめんなさい。あたしも元日本人の桜庭美智香って

言います。ここではミチって名乗っています。15歳です」

あ、あたしは転生者です」

「俺は上杉浩二30歳勇者の召喚に巻き込まれた一般人だよ」

そうか2倍も年が違えばおじさんになるのか……。

「上杉さんが作っているのってラーメンですよね。ご馳走して頂けませんか」

「いいよ。後で感想を聞かせてもらえないか?」


「はい。分かりました。わーいラーメンだ。懐かしいなあ」

「ハイお待ち」

「いただきます。つるつるつる、フーフーフーおいひいおいひい」


「で、君は今何の仕事してるの?」


「このまえまではお爺ちゃんの屋台を手伝ってたんだけど、お爺ちゃんがぽっくり逝ってしまって無職なの。屋台や調理器具は残ったけれどあたしはお金を取れるような

料理なんてできないからどうしたら良いか悩んでるの」


「俺とラーメンとカレーライスを屋台で売らないかい?」

「えっこれを売るの?やるやる絶対売れるよ」

意気投合した俺達は、ミチの家に行って屋台と調理器具を確認した。

「ねえこの屋台の名前は何にするの?

日本屋と書いて見せた。

「にほんやにっぽんや?」

「いや、日ノ本屋(ひのもとや)だ。とにかく日本の字を見れば日本人の転移者、転生者、召喚された人が贔屓にしてくれると思うんだよね」

「うん、確かに。あたしは、匂いだけで引き寄せられたんだものね」


話を聞くとミチは街中の自宅に一人で暮らしているそうだ。この建物はお爺ちゃんが屋台で売っていた料理の下拵えをしていたそうで、立派なキッチンとバストイレ。泊まり込みの時に使うべッドルームが付いていたので俺の宿に貸してほしいと頼み込んだ。

準備は着々と進んだ。屋台での商売許可と屋台の場所の確保のためにミチと一緒に商業ギルドに足を運んだ。

ミチのお爺ちゃんとの契約がまだ切れていなかったので、俺との契約に変更して貰った。金もかかったが、お城を追い出された時にもらった金貨がまだ25枚残っていたのでなんとかなった。

屋台の屋根に板で看板を作った。

日本語で日ノ本屋と書いた。屋台店の脇の立て看板に

カレーライス金貨1枚、ラーメン銀貨1枚~3枚と書いた。

ラーメン銀貨1枚はインスタント袋ラーメンだ。

醬油,味噌、塩の3種類。

銀貨3枚は某有名店の冷凍ラーメンだ。

いよいよ明日開店だ。

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