EP30 性癖破壊中
東は凛とした表情になった。これは良いことであると、麻希は彼の頭を撫でる。
「私だけに消えてほしくない~? 他の子たちも守ってくれなきゃ~」
「え、いや。他の方はまだ見ていないので」
「きっと気に入るはずだよ。放ってとけば1週間シャワー浴びない引きこもりギャル。小学生の約束を未だ覚えてる妹。その妹と仲良しの少年。気に入らないはずがないね」
麻希は弾力のある東の頬を突きながら、いたずら気味な破顔を浮かべる。
「やー。可愛いねえ。弟がいたらこんな感じだったのかね」
「あの……一応ぼく男なんですが」
「だからなんだよ。……。あ」
麻希は東の言葉の意味を理解し、彼から手を離した。性癖を壊すのはよろしくないと判断したわけだ。
が、そんな東と麻希の元に宮崎碧衣が現れてしまう。
「やー。その子誰~?」
「創麗側からの監視員らしいよ。こんな小さい子を監査に使うなんて創麗も人手不足だね」
「ふーん。可愛いじゃん」
「でしょ?」
東若葉はギャル風の少女にジロリと一瞥され、まず異臭に気がつく。悪臭ではないにしろ、独特な体臭らしき匂い。汗臭さに混じる甘い匂い。
「おお。どうした、少年よ。フリーズしてるぜ?」
「……。宮崎、あのさ」
「なんだね?」
「たまにはシャワー浴びたら?」
「…………。はい」
あっさり納得してくれた。渋々といった態度ではあるが。今回は5日間くらい入っていなかったはずだ。
「てかさー」
「なに?」
「創麗が監査員を用意したのは分かった。でもうちらは各々自分の家を持ってるわけで、ひとりじゃ監視しきれなくね?」
「確かに」
「あっ、それでしたら……」
東は書類を取り出す。
「親御さんに許可をとってもらう形になりますが、皆様には創麗所有の邸宅を提供させて頂きます。そちらのほうが互いに利がありますので」
「ぼく、声変わりもしてないのに営業職みたいに喋るね」
「……。ぼくには東若葉って名前があるんです。宮崎さん、ですよね?」
まあ、明らかに宮崎の口調は煽っていたので東が機嫌を悪くするのも致し方ない。
「あっ、ごめんね~。お詫びにキスしてあげようか?」
「き、き、き、キスッ!?」
(宮崎、悪い顔してる……)
めちゃくちゃ悪党みたいな表情している宮崎碧衣。いつか悪い女に狙われて大損しそうな東若葉は、吃りながらも必死に手で自分の顔を覆い隠す。
「冗談だよ~。うち、風呂入ってくる」
特段深掘りすることなく、宮崎は風呂場へと向かっていった。
「……あの方が宮崎碧衣さん? なんか、妙な体臭でしたけど」
「うん。たぶんフェロモン」
「へっ?」
「あの子放っておくと一週間は風呂入んないけど、なぜかあの甘い匂いは崩れない。つまりフェロモンってわけさ」
「は、はあ……」
「さて、話詰めようか」
佐野麻希はソファーに腰掛ける。
話が詰められていく。ドツボに嵌っている気がするものの、もはやどうしようもない。前に進むことでしか得られないものもたくさんあるのだから。
「──以上です。質問ありますか?」
「ない。ただまあ、創麗もよくこんな計画を考えてたモンだよ」
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