Ep26 私たちの自由
「誰と闘ってる? もうチーターくらいしか思い浮かばないけど」
ただ、麻希と少年との対決に決着がついた時点で宮崎と敵性の激突も終わってなければオカシイ。連動して動いているはずだからだ。
「とにかく、マップ通りに進まなきゃ」
視認しなくても分かる戦闘機の轟音の元へ麻希は駆け寄っていく。
そこには、満身創痍といった宮崎碧衣がいた。服は血まみれで、顔色はとても悪い。横たわり、壊され攻撃してこない飛行機のおかげでなんとか生き残っているように見える。
「宮崎っ!!」
「やあ……。調子は?」
「大丈夫かよ!? その姿ッ!」
「大丈夫なわけないさ……。この戦闘機、レベルが70以上ねえとキツイって」
麻希のレベルが50。宮崎のそれが60だと思えば、如何に厳しい闘いを強いられてきたか分かるものだ。
「でも生き残れたじゃん。まずそれが良かったよ」
「またこんなことの繰り返しかぁ……」
「いや、創麗側と取引した」
「へ?」
「私たちは自由だってことだよ」
佐野麻希は愛らしい笑顔を浮かべ、宣言した。
「創麗側の狙いは私の『ザ・ミラクル』一択。それさえ回収できればあとはなんだって良い。自分たちの管理下におければ、ね。だったら創麗についてゲームすれば良いでしょ? いままでとやることは変わんないよ。無茶な外出自粛が終わるだけで」
「マジ? あの馬鹿げた外出制限終わるの?」
「うん。たぶんね」
「よっしゃー!! 引きこもりも極めるの大変だったぜ~!」
宮崎は麻希に腕を絡める。ここまで来ると意図的にやってきるとしか思えないが、彼女からすればこればただのスキンシップらしい。
「さて、その取引先と会おう。私の家でね」
*
さほどにぎやかではなかった。佐野麻希の自宅は。
「山本、暇じゃね?」
「おれもそう思ってる。せめて身体動かせれば良いんだけど」
「さすがに屋外競技はできないよ」
「屋内だったらできるの?」
「卓球とかなら」
「良いね。それやるのもあり──」
その刹那、先輩たちが帰還した。唸り声をあげ、腕も伸ばす。
「お疲れ様です~。佐野のアネキと女先輩」
「うちには宮崎碧衣って名前があるよ」
「んじゃ宮崎先輩。つか、思ったんだけどさ」
「なに?」麻友が突っかかってくる。
「佐野にお姉ちゃんっていたっけ? お兄ちゃんの話は良くしてたよね」
これは随分と問題だ。麻希は麻友の目を一瞥し、彼女の目がくるくる回っていることを知る。ここは正体を明かしても良いのではないか。
「ああ、そのお兄ちゃんが私」
「なるほど。お兄ちゃんがお姉ちゃんになっただけか」
「えーっ!? 反応薄ッ!! お兄ちゃんにドキドキしないのッ!?」
「ドキドキしたら佐野に殺されそうだもん」
麻友をジロリとした目つきで見つめる山本知恩。どうからどう見ても女子にしか見えない男子。そんな存在は、大して佐野麻希を気にしているとも思えなかった。
「イマドキの若い子は違うね~」
「2歳差だろ、宮崎」
「だってうちら中学生のときこんなだった? もっとバカなこと考えてたっしょ」
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