Ep22 憧れのあの子とデート
宮崎は溜め息をついた。一朝一夕で終わることではないにしろ、早く見つかってほしいというのが彼女の本音だろう。
そしてそれは、麻希も同様だ。
「一応探してみよう。それにしても、リアルなゲームだねぇ」
「だよね。どうしてクライムアクションゲームでリリースしたんだろ」
「ね。ただの観光ゲーというか、雰囲気ゲーとしてもかなり良いのに」
「そこでうちは思うわけよ」
「なにを?」
「開発元の創麗グループは現実世界を拡張しようとしてると。要するに現実とこの世界の垣根をか限りなく埋めちゃう的な」
「そうかな」麻希は顔をあげ宮崎と目を合わせ、「もうひとつの現実だって売り出してるけどさ、結局これはゲームの世界。まあ、パクスコインでヒト集めてなにかを起こそうとしてる感はあるけどね」
それがなんなのか分からなければ、なにかアクションを起こすこともできない。
その後、麻希と宮崎はいくつかバグを見つけるものの、決定打に成りうるものは探せなかった。
「ねー、佐野。バグ探し飽きたよ~」
「だったらで、デートする?」
「そうしようぜ~」
鼻の下を伸ばしたくなる展開だ。あの宮崎碧衣とデート。美人のギャルと遊べる。拡張現実の世界とはいえ。
「でもさ、佐野。麻友ちゃんとの約束は良いの?」
「なんのこと?」
「え?」
「え?」
「いや、麻友ちゃんに彼氏できるまで恋人作らないんでしょ? じゃあデートも駄目じゃん?」
「ごめんだけど、いつの話? そんな約束したかな」
「え、なに? おめー、特に理由なく告白断ってたん?」
「あー、それか」麻希は合点が合ったように、「断り続けたことに理由なんてないよ。いま思うとすげー勿体ないことしたなぁってなるけど。強いて言えば、1日の中で自由な時間がなくなっちゃうからかなぁ。MMOやるのに1日の睡眠時間2時間割ってたからさ。その所為で身長も伸びなかったし」
麻希は自嘲するような笑顔を見せた。
当時中学生であった(ついでにそこそこ顔立ちの良い少年でもあった)麻希は、ネトゲにドハマリしてからというものの不養生な生活を過ごしていた。その所為で身長は高1時点で160センチとすこし。“ニュー・フロンティア”のキャラ・メイクにおける最小身長も160センチ。まあ、苦笑いを浮かべる麻希の表情からすべてを察することができるだろう。
「佐野、うちよりも小さかったもんね」
「逆に宮崎がナイススタイル過ぎるんだよ。なんでニートやってるのか分かんないくらいに」
「芸能界にでも入れと? それとも配信者? はたまたパパを見つけろって?」
「なんかゴメン……」
「あ、や。こっちこそゴメン。人生がうまくいかなすぎてさ」
そんな不毛な会話を繰り返し、みなとみらいの観光地へ歩いていくふたり。
そして5秒後、麻希と宮崎はこの新マップがあまりにも脆弱過ぎることを痛感する。
「なんか近づいてきてるよね」麻希は空を指差す。
「あれ、戦闘機? あんなので襲ってくるNPC追加されてたっけ?」
「されてないはず……うわッ!!」
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