Ep20 ブラコンですよーだ
「どしたの?」麻希がそれに気がついた。
「いや……最近の中学生って尖ってるんだなぁって」
「宮崎のほうが尖ってたよ。すくなくとも、私にはそう見えた。クラスの中心にいたしね~」
「もう私って言っちゃってるよね? 佐野、たとえ身体が女の子でも心まで女の子にならなくて良いんだよ?」
「別に一人称くらいなんだって良いだろ……。なんか、おれって言うのが落ち着かないんだよ」
ちょっと拗ねた態度の麻希。宮崎はアルビノの少女に見惚れるような表情を浮かべた。
「……まあ、山本くんなら安心だ。それに、最悪の場合は私らが装着してるサングラス取るだけで良いからね。そうすればなんとかできるから」
麻友はヒトの顔になにかついているかのように、こちらを凝視してくる。麻希は怪訝な表情になるが、その困り眉はふたりの目線を強めるだけだった。
「なんだよ、ふたりとも。私の顔になにかついてるの?」
「や、兄に可愛さで負けるとは思ってなかったってところかな……」
「ねー、佐野。うちといっしょにゲーム漬けだったのに肌荒れしてないのなぁぜなぁぜ?」
どうやら嫉妬されているらしい。ふたりとも目つきがマジだ。
女って怖いな、と小学生並みの感想をいだきつつ、麻希はさっさと装置をかけてしまう。
「あっ。佐野逃げた」
「お兄ちゃん、なんで女の子なんかに成りたがるんでしょうね? 男でいるほうがメリット多いだろうに」
「麻友ちゃん、佐野みたいなオタク男子はみんな美少女になりたいんだよ」
「えっ、なんで?」
「美少女になって男を誘惑したいからだろうね~」
「つまり同性愛ってことですか?」
「佐野は男の子だった頃からそこそこモテた。でも告白される度に断ってる。なんなら断る方便をうちに聞いてくるくらいには。だから、その──」
「お兄ちゃん、告白断ってたんだ……」
「ん? 兄妹でなにか協定でも結んでたの?」
「や、まあ……」麻友は顔と耳を赤くし、「あたし、中学生になるまでお兄ちゃんと結婚するって言い続けたんです。そしたら、麻友に彼氏ができるまで兄ちゃん恋人作らないよ、って……」
宮崎碧衣は首を軽く横に振る。佐野麻友は照れきっていて、気づいていないようだった。
そんな折、もうひとつの現実“ニュー・フロンティア”からメッセージが届く。
『早く来てよ。色々やりたいことあるじゃん?』
佐野麻希からのメッセージであった。これは会話を断ち切るチャンスであると、宮崎は急いでグラスをかける。
「麻友ちゃん、佐野に呼び出されちゃったから後でね!」
即座に意識が“ニュー・フロンティア”の非公開セッションに送られた。
麻友は溜め息をつき、山本知恩へメッセージを送る。
「どうせ実の兄が大好きなブラコンですよーだ」
夏休みだからと染めた先端がピンク色のツートンカラーヘアと八重歯が特徴的な中学2年生の少女は、またもや薄い息を吐くのだった。
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