Ep15 私を養って!!

 それが答えだと知ったふたりは、顔を合わせる。


「ゲーム脳って本当にあるのかもね。苛ついてヒトを拉致るなんて」

「ゲーム内だけで抑えておけば良いのにね。まあ、パクスコインがかかってるとなればお怒りにもなるか。さて、佐野」


 宮崎は麻希の肩を叩く。


「アンタは現実ともうひとつの現実をつなげる“ギア”を持ってる。それがどんな仕組みなのかは知らないけどさ、ひとつ分かってることあるよね?」

「なんのこと?」

「鈍感系主人公か、おめーは」


 なかなか手厳しいツッコミを食らった。しかし宮崎の言っていることがさっぱり分からない以上、佐野麻希はこういう反応をするしかない。


「佐野。その“ギア”が?」

「え? 他の“ギア”やアイテムが使えるってこと?」

「意味不明な原理で動いてるんだから、それくらい使えるはずでしょ。まあ、なんとなく取り返しつかないことのような気もするけど」

「じゃあ辞めといたほうが良いんじゃ──」

「ロマンが足りねえぞ! 佐野!」

「は?」

「アンタは『クイック・タイム』や『虚空夜叉』を持ってる! いつか億り人になってうちを養う男、基女なんだよ! だったら歯車壊さなきゃ駄目でしょ!」


 真面目な顔してふざけたことを言うものだから、これには佐野も怪訝な表情で答えるほかない。

 そんな中、宮崎碧衣のノートパソコンに映し出されていたスマートフォンの位置情報が動き出した。


「さてと! 行くよ、佐野! うちらで獲ろう、使えきれないほどの札束を!」


 これ、誘拐された妹を救いに行く話だよな? と佐野麻希は思ったという。


 *


 泣けだしの小遣いを使い、タクシーでひとけのないふ頭にやってきた佐野麻希と宮崎碧衣。ハッキングした携帯電話の居場所があっていれば、犯人はそこにいる。おそらく佐野麻友とともに。


「でもさ、宮崎」

「なに?」

「どうやって武器とか“ギア”を取り出すの? “デバイス”がなきゃ出せないじゃん」

「簡単でしょ」

「どうやるの?」

「ポーズするんだよ。クイックモーションみたいに」宮崎は指を動かし、「あのゲーム、隠し機能で即発動できるしね」

「……マジ? 超能力じゃないんだし。そんなことできるん?」

「いや、いける。現にアンタはその姿を維持できてるし」


 宮崎はあくまでも押し切る構えだ。一切☆5ギア『ザ・ミラクル』を疑っていない。それに比べれば、佐野はかなりあの“ギア”に疑念を覚えている。

 けれど、信じてみないと始まらないのも事実。あのゲームで能力を発動するには、“デバイス”で呼び出すかポージングするかのどちらか。

 前者はどうあがいてもできないので、佐野はとりあえず人差し指と中指を3回振ってみる。


 《☆4ギア『虚空夜叉』をセッテイングしました……》


 そんな無機質な言葉がなぜか脳内で再生された。


「──ぐうッ!? 頭がッ!!」


 刹那、アルビノの美少女佐野麻希は頭を抱えながら、地べたに這いつくばる。

 それはつまり、“ギア”装着に成功したという合図だ。

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