Ep12 厄介事へ道連れ
「あれ? その子だーれ?」
当然ながら、宮崎は麻友に問いかけてきた。が、麻友は宮崎碧衣をにらみつけるだけだった。代わりに兄である(見た目はアルビノの少女だが)麻希が説明に入る。
「妹だよ。いつだか会ったことあるはず」
「へー、ゲーマーなの?」
「いや? なんかいっしょにゲームしたいって駄々こねるから……」
「駄々こねてないもん!!」
突然激昂し始めた麻友。なんだかきょうの妹は様子が変だ。基本的にはいつもどおりだが、どこからしくもなく感情を爆発させるときがある。
「あ、いや……。確かにゲーム機ねだったけど、あんなに高いなんて知らなかったし。というかお兄ちゃんの部屋に転がってるヤツでできると思ってたし」
「え、VRMMO機器買い揃えたの?」
「ああ、うん。パクスコインで買った」
「ホールドしておけば良かったのに」
「ホールド?」
「パクスコインは創麗グループの後ろ盾でどんどん価値をあげてる。いま1パクスコインが50円まであがったらしいよ」
「マジ? 12,000コインあったから……600,000円? やばっ。だったら持っておけば良かった──」
「ねえ!! そんなにあたしのこと嫌いなの!?」
麻友は声を荒げた。麻希や宮崎からすれば、なぜそんなに激怒しているのかも分からない。それが故、謝罪の言葉も見つからない。
「バカ! アホ! クソ!!」
そうしてふたりがフリーズしていると、麻友がどこかへ走り去ってしまった。麻希は咄嗟に追いかけようとするが、宮崎に静止される。
「なんで邪魔するんだよ。あの子、このゲーム始めてから1時間も経ってないんだぞ?」
「ちょっと頭冷やしたほうが良いよ。あの子も、君も」
「なんでわたし……おれが?」
宮崎はつらつらと語る。
「佐野がいきなり女の子になって妹ちゃんも心の整理がついてないんだよ、たぶんね」なにかを言いかけた麻希に言葉を被せ、「そういう問題は話し合うのも大事だけど、時間を置くのも手段じゃない? うちだって妹ちゃんと会ったのは一回しかないから、あの子の性格なんてろくに知らないけどさ」
麻希は口をへの字に曲げるものの、麻友を追いかけることは取りやめた。
「だいたいさ、佐野って妹ちゃんのこと大事にしてる?」
「してるさ。兄妹だもん」
「それなら良いけど、ちゃんと伝えることも大事だと思うよ」
「要するに、時間を空けてその後誠意を伝えるべきって話?」
「そんな感じ。それに……うちも妹ちゃんと仲良くなりたいしね~」
そんな会話の最中、ミッションの依頼が“デバイス”に訪れた。ふたりは、というか麻希は一旦妹との問題を棚上げするためにジョブへ挑むのだった。
*
「あー。疲れた」宮崎はクタクタだった。
「さすがに10時間連続でやるのはキチイよ……」
ふたりは東京を模したフリーセッションに戻ってきた。そして一度置いておいた問題解決のため、麻友へ電話をかける。
「麻友、ゴメン。PK厨にやり返そうとしたり、パクスコインをガチホしておけば良かった的なこと言ったりして」
が、麻友は反応しない。それもそのはず。
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